Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

奇人たちの晩餐会

2006-03-29 | 外国映画(か行)
★★★★★ 1999年/80分
監督/フランシス・ヴェベール 主演/ジャック・ヴィユレ

「フランス映画嫌いの方にも大プッシュ」

出版社の社長ピエールは仲間のエリートたちと共に、毎週水曜日に“バカな奴”を呼んで行う晩餐会を楽しんでいた。誰もが認めるおバカさんを連れてきた者が勝者となるため、今週はどんなバカを呼ぼうかと物色していたところ、マッチ棒で建築物のミニチュアを作っている「ピニョン」という人物を見つけた。「こいつは今まで招いた中でもとびきりのアホウだ」と自信満々のピエール。ところが、当日ぎっくり腰になってしまい、ピニョンが自宅にやってきてしまう…

これぞフレンチコメディの王道。あー、おもしろかった。で気持ちよく終われます。まずもって、エリートたちがバカな奴を呼んで、そいつを種にメシを食うってのが、すごい悪趣味でしょ。こんな設定を考え付くなんて、さすがフランス人(笑)。もちろん、招待されたバカな奴はなぜ自分が呼ばれたのか知らない。そして、いよいよ真打ち「ピニョン」の登場。ピニョンって、名前がもうバカっぽい。ピニョンを演ずるのはフランスの有名な喜劇役者ジャック・ヴィユレ。この人のために脚本を書いたらしく、当たり前ですがはまり役です。

最初の展開からして、「バカを笑う奴が、いつのまにか立場が逆転して…」というストーリーは誰でも思いつくでしょう。そういうこちらの予想を見事に叶えつつも、しっかり笑わせてくれます。ドカンドカンと大笑いではなく、クスクス笑い。映画の前半、観ている私たちは、ピエールの視点でピニョンを見ています。つまり我々もピニョンのことを「なんてバカなヤツだ」と思って観ているわけです。ところがどっこい、後半になると我々の視点はピエールからピニョンへと変わっていきます。「ピエールってなんていけすかない奴なんだろう」、と腹立たしくさえなってくる。この視点の移動が非常にスムーズ。

それも、ピニョンを演ずるジャック・ヴィユレが非常に巧いからなんですね。おバカなピニョンがふと発言する人生の真実、そして彼のもつ純粋な人間性を観ているうちに、「バカと笑う奴こそ、本当のバカなんだ」と気づいてくる。人間に優劣をつけることの愚かさや、他人を笑いものにする人間の傲慢さに気づく。(ま、それでもピニョンは徹底的におバカに描かれているのですが)。

でもね、決して説教くさくないんですよ。あくまでもコメディだから。こういう風味の映画すごい好きですね~。80分ですからさらっと見られるんだけど、見終わった後きちんと余韻が残る。中島らも氏はよく言ってましたよ。小説書くのは長編より、短編の方が難しいって。しかも「笑い」が一番難しいって。だから短い時間で、笑わせて、考えさせてくれる映画ってのは、とてもレベルが高いのかも知れないですね。


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長く使うことを大事にする社会

2006-03-29 | 子育て&自然の生き物
日曜日、東京から久しぶりに友人が来訪し、一緒に「かやぶき集落」へ行った。我が家から車で20分ほど行ったところにあるこの「かやぶき集落」は、国から指定保存地域を受けている。このあたりは「かやぶきの里」と称して、大阪や京都からの観光客も多い。

茅葺きの家の中は、もちろん昔ながらの日本民家の佇まい。囲炉裏のある家も多い。茅葺きをいい状態でキープするためには、この囲炉裏を活用することが不可欠だそう。囲炉裏で出た煙が天井にのぼり、屋根をいぶすことによって茅を強くし防虫効果をもたらすのだ。しかし、今では、囲炉裏から煙の上がる茅葺き屋根の家はほとんどなく、そのため屋根の傷みも早い。詳しいことはわからないが、囲炉裏を使っていた頃は「50年に一度」ほどの葺き替えが、今では「20年に一度」ほどの割合に早まっていると聞いたことがある。しかもその葺き替えにかかる費用は、200万円とも300万円とも言われる。この地域のように保存指定されている場所なら国から援助が出るようだが、そうでない地域の茅葺きにはたぶん出ないのであろう。指定地域外の茅葺きの家が次々とトタン屋根をかぶせていくのも致し方ないように思える。

家を残していくというのは、非常にお金も苦労もかかるのだと痛感する。実際、我が家は茅葺きではないが、一戸建ての家をメンテしながら住み続けるというのは、予想以上にたいへん。マンションに住めば、ケーブルテレビが見られる、インターネットもつながってる、水洗トイレがついている、その全てを自分たちで何とかしなければいけない。マンションであれば、何らかの事情で買い換えるといったことも、家を建てると一生そこに住まねばならないという強迫観念からなかなかできない。

マンションの良さだってわかる。最近のマンションはすごい便利だし、機能的。それに都会でサラリーマンしてたら、それしか選択肢ないですもんね。だけど、日本の経済は、どんどんマンションを建てることで潤うものらしい。土地の持ち主、マンションを建てる大手ゼネコン、マンション管理会社、ローンを貸し出す銀行が「マンションを建てろ!建てろ!」とはやしたてて莫大なお金を市場に撒き散らす。経済を潤わすのは何でもそう。がんがんマンション建てる、どんすかどんすか道路を作る、工事、工事、工事。なんかね、それしか頭にないのかよ、と思っちゃう。携帯にしたって長持ちしないし。買い換えることで経済を潤わすのではなく、長持ちさせることで豊かな文化を持つことにもう切り替えてもいんじゃないの?別に経済大国になる必要なんてないよ。ああ、またPSE法のことも思い出して腹立ってきちゃった。