★★★★★ 1964年/アメリカ-イギリス/93分
監督/スタンリー・キューブリック 主演/ピーター・セラーズ
「ひきつった笑い」
アメリカ軍基地の司令官が、ソ連の核基地の爆撃指令を発した。司令官の狂気を知った副官は、司令官を止めようとするが逆に監禁されてしまう。大統領は、ソ連と連絡を取って事態の収拾を図るが、迎撃機によって無線を破壊された1機が、ついに目標に到達してしまう…。
面白い。非常に面白いです。ちょっと頭がおかしくなった将軍の命令一つで、次々と悲劇的な展開になって、最終的には人類滅亡という最悪の局面を迎えるというブラックユーモア満載のコメディ。この映画の本当のタイトルは「博士の異常な愛情または私は如何にして心配するのを止め水爆を愛するようになったか」という、人を食ったようなタイトルでして、悪ふざけもいい加減にしろ、と言われるのを敢えて喜んでいるようなそんな感じすらします。
時代背景は「米ソ冷戦時代」なわけですが、正直今も全然変わってないな、というのを痛烈に感じます。この映画が作られたのが1964年で、すでに40年近く経っているわけですが、抑止力のためという大義名分のもと、軍事力をどんどん拡張していることは何ら変わらないですし、軍人は政治家に対してえばってますし、結局みんなご都合主義で本当に平和のことなんて誰も考えちゃあいない。
主演のピーター・セラーズは、英国大佐、大統領、マッド・サイエンティストの一人三役。特にストレンジラブ博士のキレっぷりは必見。「総統!」と叫んで車いすから立ち上がり歩けるようになっちゃうシーンは、もうそこまでやるか…ですね。また、やたらとソ連をバカにして、いつもガムばっか噛んでてトンデモ発言を繰り返すタージドソン将軍。確かにピーター・セラーズは怪演ですが、この人のキレっぷりもすごいです。
戦争を描いた映画というのは、それこそいろんなものがあります。もちろんその大半が「戦争をしてはならない」というもので、それを表現するために兵士とその家族を描いたり、大規模な戦闘シーンを撮影したりするわけですが、その手の映画ばかり見ていると、本当にこの映画の手法が新鮮に映ります。道義的に考えて、これ笑ってもええんかいな、というシーンの連続です。ブラックユーモアという言葉でもまだ軽いですね。でも、かといって戦争を扱った感動大作よりも、深く心に残らないかというと、全くそうではない。中途半端に泣かせる映画よりも、よっぽど人間の愚かさというのをまざまざと感じさせます。
それにしてもまあ、「よくもここまでやったな」と思いますね。今見ても強烈なのに、公開当時はさぞや反響が大きかったに違いありません。マイケル・ムーアの「華氏911」も結構突っ込んでますが、ここまで徹底的に政治家や軍人を馬鹿にして、よくもまあキューブリックはその後も仕事が続けられたものだと思います。
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監督/スタンリー・キューブリック 主演/ピーター・セラーズ
「ひきつった笑い」
アメリカ軍基地の司令官が、ソ連の核基地の爆撃指令を発した。司令官の狂気を知った副官は、司令官を止めようとするが逆に監禁されてしまう。大統領は、ソ連と連絡を取って事態の収拾を図るが、迎撃機によって無線を破壊された1機が、ついに目標に到達してしまう…。
面白い。非常に面白いです。ちょっと頭がおかしくなった将軍の命令一つで、次々と悲劇的な展開になって、最終的には人類滅亡という最悪の局面を迎えるというブラックユーモア満載のコメディ。この映画の本当のタイトルは「博士の異常な愛情または私は如何にして心配するのを止め水爆を愛するようになったか」という、人を食ったようなタイトルでして、悪ふざけもいい加減にしろ、と言われるのを敢えて喜んでいるようなそんな感じすらします。
時代背景は「米ソ冷戦時代」なわけですが、正直今も全然変わってないな、というのを痛烈に感じます。この映画が作られたのが1964年で、すでに40年近く経っているわけですが、抑止力のためという大義名分のもと、軍事力をどんどん拡張していることは何ら変わらないですし、軍人は政治家に対してえばってますし、結局みんなご都合主義で本当に平和のことなんて誰も考えちゃあいない。
主演のピーター・セラーズは、英国大佐、大統領、マッド・サイエンティストの一人三役。特にストレンジラブ博士のキレっぷりは必見。「総統!」と叫んで車いすから立ち上がり歩けるようになっちゃうシーンは、もうそこまでやるか…ですね。また、やたらとソ連をバカにして、いつもガムばっか噛んでてトンデモ発言を繰り返すタージドソン将軍。確かにピーター・セラーズは怪演ですが、この人のキレっぷりもすごいです。
戦争を描いた映画というのは、それこそいろんなものがあります。もちろんその大半が「戦争をしてはならない」というもので、それを表現するために兵士とその家族を描いたり、大規模な戦闘シーンを撮影したりするわけですが、その手の映画ばかり見ていると、本当にこの映画の手法が新鮮に映ります。道義的に考えて、これ笑ってもええんかいな、というシーンの連続です。ブラックユーモアという言葉でもまだ軽いですね。でも、かといって戦争を扱った感動大作よりも、深く心に残らないかというと、全くそうではない。中途半端に泣かせる映画よりも、よっぽど人間の愚かさというのをまざまざと感じさせます。
それにしてもまあ、「よくもここまでやったな」と思いますね。今見ても強烈なのに、公開当時はさぞや反響が大きかったに違いありません。マイケル・ムーアの「華氏911」も結構突っ込んでますが、ここまで徹底的に政治家や軍人を馬鹿にして、よくもまあキューブリックはその後も仕事が続けられたものだと思います。
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