Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

時計じかけのオレンジ

2006-06-20 | 外国映画(た行)
★★★★★ 1971年/イギリス/137分
監督/スタンリー・キューブリック 主演/マルコム・マクダウェル

「いつ見ても超問題作」

時代は近未来。暴力とレイプに明け暮れる4人の非行グループのリーダー、アレックスは、ある日仲間に反逆されて警察に捕まり投獄される。刑務所では聖書を読み更正したふりをし、政府が始めた攻撃性を絶つ洗脳実験に、すぐ釈放されるという理由で自らモルモットを買って出る。暴力を起こそうとすると極度の吐き気におそわれるアレックス。実験は成功したとして、アレックスは釈放されるのだが…

キューブリックのレビューなわけですから、まずはSF3部作を完結させないと。というわけで「時計じかけのオレンジ」です。まあ、この作品を最初に見た時の衝撃はすごかったですね。この衝撃に匹敵するのは、小学生の時にラジオでYMOの「テクノポリス」を聞いた時かな。私の人生、2大ショッキング事件のひとつです、この映画は。

「2001年」同様に、美術とファッションが素晴らしい。今でこそミッドセンチュリーなんて言って60年代頃のインテリアをもてはやしていますが、そんな上っ面だけを借りてきたしょうもないインテリアショップに行くくらいなら、断然この映画を見た方がいい。本当はこのシーンのこの椅子がかっこいいとか、壁紙がこんな風でイカしてるとか、全部書きたいところだけど、それをするとたぶんそれだけでレビューが終わってしまう。

また、そういった洗練さを果たして手放しで賞賛してよいのか、というほど物語がショッキングです。真っ当に考えれば、いかなる悪人であろうと国家が個人を統制することはいけない、またはできないということなのだと思いますが、アレックスが持つ残忍性に対して我々がほんの少しでも共感しやしないか、という恐ろしい現実をキューブリックは突きつけているような気がします。

目玉をカフスボタンにあしらったシャツに山高帽。「雨に唄えば」を歌いながら暴力を奮いレイプする。仕事(強盗)が終わって部屋に帰ればベートーベンの第9をヘッドフォンで聴き、恍惚に浸る。悪の権化とも言えるアレックスをこのようにセンス溢れる映像と音楽で描写しきってしまうキューブリックという人こそ恐ろしい。「問題作」という言葉は、まさにこの映画のためにあるのです。


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