Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

デビルズ・バックボーン

2008-05-31 | 外国映画(た行)
★★★★ 2001年/スペイン 監督/ギレルモ・デル・トロ
「生き残る子供たち」


世の中は戦争のただ中、自分はひとりぼっち、唯一の逃げ場であるはずの孤児院にも慈悲深いシスターがいるわけでもなく、優しき父を思わせる神父がいるわけでもない。むしろ、信用ならないひと癖もふた癖もある大人だけ。そこへもってきて幽霊の出現です。子供たちの精神状況は極限にまで追い詰められていく。だけど、どんなに悲惨な境遇であろうとも、サバイブしていく。それが、子供。どんなに追い詰められても、生き抜く道を選択する子供たちの逞しさが生々しく描かれています。

老いた義足の女院長と逞しい若い用務員が肉体関係にある辺りは、さすがアルモドバルがバックについているのもさもありなん、という倒錯した世界。個人的にはこの辺のきわどい描写はもう少し物語としても煮詰めて欲しかったところ。しかし、地下室に蠢く子供の幽霊、ホルマリン漬けの幼児の遺体など、妖しげなムードは十分堪能しました。

幽霊が出てくるからと言ってホラーのジャンルと呼ぶべき作品ではありません。また、本作を「スタンド・バイ・ミー」を引き合いに出す人もいるようですが、子供が逞しくなれば何でもかんでも「スタンド・バイ・ミー」に例えるのは少々安直ではないでしょうか。戦争を描いている作品でもあり、ずるい大人を描いている作品でもあり、殺された子供の怨念を描いている作品でもあり、一概に一つのジャンルでくくることのできない豊かな世界を持つ作品だと思います。しかし、裏を返せばその突出のなさが、作品全体としての個性を奪ってしまったような気もします。というわけで次回作「デビルズ・バックボーン」は評判も上々のようですので期待してDVDを待ちたいと思います。