Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

ホテル・ルワンダ

2008-11-02 | 外国映画(は行)
★★★★☆ 2004年/イギリス・イタリア・南アフリカ 監督/テリー・ジョージ
「究極の選択」


ヨーロッパ人が統治しやすいようにと勝手に振り分けられた「ツチ族」と「フツ族」。第三者の目から見れば、不条理極まりない闘争も、いったん火が付けば、誰もが当事者となり、己の名誉や欲のために、敵を殺すしか道はなくなるのか。同じ人種でも、いがみ合い、殺し合う悲しさ。そして、間に入れど手をこまねいているしかない国連軍。彼らの姿に何もできない自分をつい重ねてしまいます。そんな無力感が増せば増すほど、自分のふがいなさに打ちのめされる。それが昨今の戦争映画で味わう苦々しさです。

ところが、ポールという人の生き方については、深く考えさせられました。ポールはヒーローになりたくてあのように行動したわけでもないし、根っからの善人であったわけでもない。そこにこの作品の見どころがあるという意見には私も賛成します。しかしながら、もう一歩踏み込んで、ポールは常に「Aを取るか」「Bを取るか」という二者択一の場面で、「私」よりも「公」を、「利己」より「利他」を選択します。そこに私は深く感動しました。ただひとりのちっぽけな人間の選択。それは、私にもできる選択。しかし、あの究極の局面でそれが私にできるだろうか、と。また、ホテルの支配人として培った交渉術、人の扱い方が随所で活きてくるのですが、これもまた然りです。窮地に陥った時に我が身を守るための何かを自分は身につけているだろうか、と。

図らずも紛争に巻き込まれてしまった普通の男の物語という様相を呈しつつも、究極の選択をあなたはできるか、と問いかけられているような気持ちになりました。己の選択に慌てふためくでもない、悦に入るでもない、等身大のポールを演じるドン・チーゲルも光ります。いい作品です。