Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

エリザベス

2008-11-26 | 外国映画(あ行)
★★★☆ 1998年/イギリス 監督/シュカール・カプール
「『ブーリン家の姉妹』を見た後で丁度良かった」


エリザベスの母、アン・ブーリンの怒濤の一生を描く「ブーリン家の姉妹」を見て、興味が湧き鑑賞。まず、基本的に人物関係や歴史的背景に関する説明がとても少ない。それは、ストーリーを追いながら補完できたとしても、なにゆえ主人公エリザベスがこれほどまでに周囲の人間に忌み嫌われるのかということ。つまり「妾腹」だの「淫売女の娘」だと揶揄される由縁がわかっていないと、エリザベスの苦悩が共有できません。ちょっと事前のお勉強が必要ですね。イギリス史に疎い私なぞ、「ブーリン」を見ていたからこそ、楽しめました。

「ブーリン」もそうでしたが、イギリスの歴史って血なまぐさい。陰謀だらけ、拷問だらけ、斬首だらけで、かなりハード。そんな中、幽閉されていたエリザベスが、いかにして女王としての覚悟を身につけていくかってプロセスが軸になっているわけです。しかしながら、エリザベスの心情があまり際立って来ない。スコットランド女王メアリーとの確執、スペインとの睨み合い、ローマ法王の差し向ける暗殺者。次々と我が身に降りかかる国の窮地、死の恐怖、愛する者の裏切り、もっとエリザベスの胸中をえぐるような脚本、演出にならなかったかなあと思います。

その点、「ブーリン」は、大奥さながらのドロドロ劇ですが、波瀾万丈な人生ドラマが結構面白いのです。いかんせん、幼なじみの思い人を演じるジョセフ・ファインズがあまり魅力的ではない。だから、愛を捨てねばならんつらさがぐいっと迫ってこないのです。結局、歴史のあれこれを追いかけるのでいっぱいいっぱいという感じです。

ラストに至り、毅然と国王の椅子に腰掛けるケイト・ブランシェットの迫力はなかなかのもの。パート2を作りたくなるのもわかります。そして、色好みのフランスの貴公子、ヴァンサン・カッセルがハマリ役。この時代からフランス人は享楽的で、イギリス人は堅物だったんですね。歴史大作としてのスケール感はまずまずと言ったところでしょうか。それにしても、イギリス王家は「メアリー」だらけ!めちゃめちゃ、混同します。アン・ブーリンの妹もメアリー、エリザベスが王位に着く前の王位継承者(ヘンリー8世の娘)もメアリー、スコットランド女王もメアリー。みなさま、どの「メアリー」か気をつけながらご鑑賞下さい。