Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

友だちの恋人

2008-11-13 | 外国映画(た行)
★★★★ 1986年/フランス 監督/エリック・ロメール
<6つめの格言:友だちの友だちは友だち >

「揺れ動く乙女ゴコロ」


主人公は、パリ近郊の新都市セルジー=ポントワーズで市役所に勤めるブランシュ。キーカラーなんだろうか。いつもブルーの服を身にまとっている。それは、ブランシュ自身の煮え切らない気持ちから来る「ブルーな気分」を表しているようにも見える。また、舞台となっているセルジー=ポントワーズという街。計画的に開発された都市らしく、ブランシュの住むマンションを始め、スタイリッシュな建物も見どころ。この洗練された街の雰囲気とブランシュの幼さが、面白いギャップ感を生み出しています。

ブランシュには親友のレアがいて、その恋人がファビアン。いやあ、ロメール作品には珍しいイケメンくん。大人しいブランシュに対して、自由奔放なレア。恋人のファビアンもそんなレアに振り回されている。ブランシュは、ファビアンの知り合いのプレイボーイ、アレクサンドラを紹介され、一目で気に入る。でも、彼の前ではどうもうまく自分を表現できない。気取ってみたり、嘘をついたり、素直になれない…。

ところがある日、レアが恋人ファビアンをほっぽり出して、ナイショで別の男とバカンスに出かけてしまう。残されたもの同士、ブランシュとファビアンは水泳をしたり、食事をしたり、共に日々を過ごすうち、互いにとてもしっくり来ることに気づくのだが…。

男女4人を取り巻く恋模様。気持ちがあっちに行ったり、こっちに行ったり。まあ、よくあるお話ではあります。主人公のブランシュ。お役所勤めの割にはキャリアっぽくないと言うか、引っ込み思案でくよくよしてて、まだまだ「女の子」って感じ。フランス人女性って、自分の意思がしっかりあって、自由奔放で、恋愛の手練手管もバッチリ。なんてイメージがあるもんだから、そのギャップにとまどってしまう。でも、この格言シリーズに出てくる女性はみんなそうなのよね。「緑の光線」のデルフィーヌもそうなんだけど、「もうちょっとハッキリしなさいよ」とおせっかいを焼きたくなるようなキャラクター。

ロメールのような粋で知的なフランス人男性の周りには、きっと仕事も恋愛もバリバリ積極的なフランス人女性がたくさんいると思うんです。なので、こういうキャラクターの女性にばかりスポットを当てるのには、何か理由があるのかなあなんて、思ってしまいます。

ブランシュは相手を騙したり、自分を大きく見せたりとかしない。すごく素直な女の子で、シリーズ最終作品ってこともあるんでしょうか。とても素敵なハッピーエンドが待っています。いちばんそばにいる人が大切な人。いちばん飾らないでいられる人が必要な人。まるで、甘酸っぱい思春期の物語のよう。ふたりが抱き合うラストカットもとても微笑ましい。実はこのラストを迎える前に、偶然出会ったブランシュとレアが自分が好きな男の名前を伏せたまま会話をしたため、誤解が生まれ、そのままみんな別れちゃうの!?と思わせる展開があるんです。ただの会話のすれ違いなんですけど、ドキドキさせられました。ロメールって、何気ない会話のこういうちょっとしたシークエンスにやられちゃうんです。