Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

恋の門

2008-11-07 | 日本映画(か行)
★★★★ 2004年/日本 監督/松尾スズキ
「躁鬱ムービー」

極彩色の映像にテンション高いオタクな世界。冒頭しばらく見て、クドカンか、はたまた中島哲也が頭をよぎる。しかし、この独特のハイな感じは何か違う。これぶっちゃけ躁状態でしょ。メーターふっきれるくらいテンションあがったかと思うと、ドーンと落ちる。これは、鬱。つまり、とても躁鬱的な展開なのね。3人がコンクールに応募しようとマンガを描いて、描いて、描きまくる。すばやくカットが切り替わりみんな「気持ちいー!」と叫ぶ。ここは、躁のてっぺん、つまりトランス状態に入ったところ。つまり、この映画には作り手の精神的不安から来るアップダウンな精神状態が如実に反映されているとしか思えないのです。それが、妙に私のツボにはまりました。でね、「クワイエットルームにようこそ」が面白くてこれを見たわけだけど、松尾スズキが次作で精神疾患の女性を主役にしたのは、これを見て大いに納得という感じなの。

「何だ、それ!ぎゃはは」と笑えるポイントはことごとく、「イってるよね、この人(松尾スズキのこと)」と言うつぶやきが頭をよぎってしょうがない。だって、小日向英世のボンデージと平泉成のアフロには、おったまげましたよ。塚本晋也だの、三池崇史だの、庵野秀明だの、監督たちのカメオ出演は数あれど、こんなにおかしな人々が集う映画ってそうそうないでしょ。

趣味の違う門と恋乃が境界線を越えようと行ったり来たりするのは、いわゆるラブストーリーではありがちな恋の障壁ですが、サブカルとオタクがドッカンドッカンぶつかるその様はさながら異種格闘技のような面白さ。そして、キスシーンの多いこと。しかも、ちゅぱちゅぱと生々しいキスシーンのくせにちゃあんと胸がキュンとなるんだわさ。エロいくせに、キュートなシーンも用意しているあたり、おぬしやるなあ、なんてね。ボロぞうきんみたいな服装の松田龍平くんもいいねえ。小汚い系男前は長らくオダジョーに軍配をあげていたのだけど、お嬢様の香椎ちゃんと無難に結婚したもんで、再び龍平くんも応援しよっと。

以下、私の勝手な監督評。哲学漫画「真夜中の弥次さん喜多さん」をシュールなナンセンス映画に仕上げたクドカンは、とてもクレバーな人だと思ってる。あんな風に見せておいて、実は物凄く頭の切れる人。「松子」の中島監督は、狂騒的に見せるけど、すごく綿密に計算している人。で、松尾スズキはと言うと、感性で勝負している、アーティスト型。理屈でとらえようとするより、肌で感じる方がいいのかも。演劇にはめっぽう疎い私は、ついこの間までクドカンも松尾スズキもほとんど一緒だったわけだけど、私の肌に合うのはどうやら松尾スズキとわかりました。収穫の1本。