Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

フロスト×ニクソン

2010-03-10 | 外国映画(は行)
★★★☆ 2008年/アメリカ 監督/ロン・ハワード
「ニクソンの心の内側」

アメリカの政治には詳しくないけど、十分楽しめました。

ウォーターゲート事件で失脚したニクソンは、政界への復帰を狙っている。そんな中イギリス人司会者デビッド・フロストからインタビューを申し込まれる。ニクソンは、組みやすし相手として、インタビューを受託するのだが…。

インタビュー初日、相手を煙に巻くニクソン。その戦法の巧さと言ったら。まあ、アメリカの政治家だったら、これくらいお手の物でしょうかねえ。何せ「ディベート」大好きなお国柄ですからね。4日間に亘って行われるインタビューでフロストとニクソンの丁々発止があるかと思ったんですけど、意外とそうでもありません。ああ言えばこう言うの激しいやりとりの中でついにニクソンが屈服する、そんな物語を期待していると少し肩透かしでしょう。むしろ、このやり取りの中で現れるのは、ニクソンの心の奥に隠されているもの、人間性。

アメリカの大統領までのぼり詰めるんですから、ある程度の腹黒さは理解できます(笑)。そして、お金に対する執着。やはり、ひと際クローズアップされるのは、自分の出自と容姿に対する劣等感です。大統領にもなった人間が、すでに60歳を過ぎた男が、未だにそんなちまちましたコンプレックスを持っているんだなあ。フロストが履いていたグッチのビットモカシンに興味を示し、部下の前では「女性的」と蔑むのが印象的です。ああした小粋な靴を履きこなせないことの劣等感でしょう。

このようにインタビューのやり取りそのものではなく、ニクソンという老獪な政治家の心の奥がちらちらと見え隠れすることが、本作の面白さ。ニクソンを演じたフランク・ランジェラの演技あってこそかなと思います。

さて、随所に関係者の証言が挿入されるのですが、これが本人ではなく、俳優陣。当たり前ですが。でも、こうしたドキュメンタリー「風」の演出って、あまり好きではないんですよね。せっかく作品に入り込んでいるのに、現実世界に引き戻されちゃう感じがして。あの証言シーンがない方が私は好きです。