Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

パラノイドパーク

2010-03-17 | 外国映画(は行)
★★★★ 2007年/アメリカ 監督/ガス・ヴァン・サント

「彫像に血は通っていない」

スケートボードに夢中の16歳の少年アレックス。その日、スケートボーダーたちの憧れの公園“パラノイドパーク”へ向かった彼は、不良グループと出会い危険な遊びに誘われる。しかしその遊びの最中、思いもかけぬ事件が起きる…

主演の男の子のクローズアップが何度も出てきますがとても美しいです。まるで、ギリシャ彫刻のよう。でも、この美しさというのは、生との乖離が生みだしたものなんだろうというのを強く思います。悩み、苦しみ、悶えるという醜い姿からかけ離れているからこその美しさ。だから、彼のクローズアップが美しければ美しいほど、私は怖くなりました。

自分が犯したできごとなのに、警官に詰め寄られてもまるで他人事のよう。何が起きているのかわからない。事実を受け止められない。アレックスにとっての日常って、白昼夢みたいなものなのでしょうね。そうした、現実との乖離というのは、これぐらいの年頃にはきっと誰にも当てはまるものかも知れない。ガールフレンドともそういう関係になると煩わしくて別れると言い出すというのも、理解できるしね。むしろ、事故現場の写真を見せられた少年たちが嫌悪の表情を全く見せずに、「こりゃあスゲーや」とヘラヘラ笑ってるシーンの方がショックだった。

彼らにとって現実と言うのは、どれほど確かなものなのだろう。「君は明日死ぬんだよ」。そんな宣告を受けても、「そりゃすげーや」と笑ってやり過ごすのだろうか。そんなことを考えると、やりきれなくなる。でも、ガス・ヴァン・サントは決して絶望的には描いておらず、今、この時代を生きる少年たちの孤独を淡々と描写することで我々大人たちのなすべきことをしっかり考えさせる作品になっている。その手腕は見事だと思う。