Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

剱岳 点の記

2010-03-30 | 日本映画(た行)
★★★★ 2008年/日本 監督/木村大作
<とある上映会にて観賞>

「景色の凄さと人間ドラマが反比例」

壮絶な雪山の景色はぜひともスクリーンで見るべき、と聞いていたのですが、都合が合わずこりゃDVDになりそうだぞ、と思っていましたら、住んでいる地域で上映会が開催されたので行ってきました。

引きの絵がすんばらしいですよね。雪山にちょんちょんと黒い豆粒のように見える人々。前も見えない、びゅうびゅうと吹きすさぶ吹雪の中をごろごろと人が転げ落ちたりして。「本当に命の危険を感じました」と香川照之が言っていた言葉に嘘はなかったです。おそらく本物のマタギの方だと思うのですが、銃を構えたまま急斜面を滑ってヒグマをしとめているシーンは驚愕でした。撮影スタッフも出演者もどれほど苦労して撮りあげたのかを思うと本当に頭が下がります。

ところが山のシーンが壮絶であればあるほど、山を下りた日常のシーンの陳腐さが際立ち、作品全体の足を引っ張っているように感じられて仕方ありません。夫婦の会話シーンもベタ過ぎて思わず苦笑いです。何だか寅さんを見ているようで。金持ちの遊びと揶揄される山岳隊との確執、陸軍の名誉のために命をかけることの滑稽さ。このドラマとしての大きなふたつの軸が胸に迫ってこないんですよねえ。何とも、もったいない。ちゃぶ台ひっくり返すようだけど、この主演浅野くんで良かったんだろうか。このベタな演出にはいわゆる演技派と呼ばれている人が合っていたのではないだろうか。まあ、浅野クンの件はさっ引いてもなお、対話のシーンのベタな演出が残念なのでありました。