Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

ダークナイト ライジング

2013-02-01 | 外国映画(た行)
★★★★☆ 2012年/アメリカ 監督/クリストファー・ノーラン
(映画館にて鑑賞)

「ラストソングに総立ちの解散コンサート」


前作「ダークナイト」の圧倒的な世界観に比べると見劣りしてしまうのは、これはもう仕方がない。
あれが凄すぎた。
悪役のベインはマスク野郎で肉弾戦好きのプロレスラーみたいだし、核に対する考えも何だか軽いし、
洞窟に閉じ込められたブルースが必死こいて腕立て伏せしてるくだりなんて、
どっかの漫画で見た事あるようなベタな展開だし。正直ブルースが洞窟にいる間は眠かった。

それでもやはりこのシリーズには、魅力的な映像に心沸き立つシーンがたくさんあって、
どういう映像を見ると人間は興奮するのかってことをノーランはよくわかっていると思う。
バッドポッドに乗ってバットマンが登場すると思わず「キターー」と心の中で叫んじゃうし(笑)、
タイヤがきゅるきゅると回って方向転換するその動きとか、
まるでバッドポッドに合わせてデザインされたかのようなキャットウーマンのスタイリッシュなコスチュームとか、
すっかりこの世界に見入ってしまう。
最終作にして初登場のジョセフ・ゴードン=レビットもアン・ハサウェイもダークナイトの世界にぴったりとはまっていたし、
やはりコンダクターとしてのクリストファー・ノーランの能力はずば抜けていると思う。

そして、クリスチャン・ベール、マイケル・ケイン、モーガン・フリーマン、ゲイリー・オールドマン。
これだけの演技派俳優が「アメコミ」という世界観の中で、活き活きとキャラクターを演じているのが痛快だった。
まるで彼らのためにキャラが作られたかのようなハマりっぷりだったから、
完結編の何が一番悲しいかというと、このメンツがもう二度と揃わないということだ。
うん、大好きなバンドの解散コンサートを見に来ている心境と非常に似ている。
ああ、もうこのメンツで演奏することは二度とないんだなという寂しさ。
マイケル・ケイン演じるアルフレッドがブルースに別れをつげるくだりなんて、かなりうるうるしてしまったよ。
そしてコンサートも終わりに近づき、その寂しさがじわじわと込み上げてくる。
誰が黒幕だったとか、ちょっとしたどんでん返しもあるけど、それよりもブルース、アルフレッド、フォックス、ゴードン、
彼らの関係がどんなカタチで終焉を迎えるのかということの方が私には大事だった。

そんな寂しさと期待の入り交じった心境の中、迎えたエンディングはお見事のひとこと。
中盤の中だるみも、前作と比べた物足りなさも、帳消し。
黒幕のオチを超える見事なオチが付いた完璧なエンディングで、
よくぞノーランここまで美しい幕引きを演出できたなと感服するしかありません。
(ゴードンって、バットマンの正体知らなかったんだっけ!?ということに今更気づいて驚愕。笑)

それにしても公開日に乱射事件が起きてしまったことは残念です。
バットマンシリーズは常に「誰も殺さず」を貫いてきており、
そのモットーのおかげでブルースは苦悩し続けている様が描かれているにも関わらず、ですからね。
ヒース・レジャーの死といい、何かと曰く付きのシリーズになってしまった。それほど影響力の大きい映画ということなのか。
皮肉な運命を背負ったシリーズでした。果たして、意味深なラストカットは新シリーズに向かう布石でしょうか。。
しかし、今は、さらば、ブルース。さらば、アルフレッド。さらば、フォックス。さらば、ゴードン。
と素晴らしき4人組に別れを告げ、寂しさの余韻に浸るしかないのでした。