Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

魂のゆくえ

2020-05-07 | 外国映画(た行)
★★★★☆ 2018年/アメリカ・イギリス・オーストラリア 監督/ポール・シュレイダー

環境破壊問題に教会の癒着。社会問題に斬り込む重苦しい作品かと思いきや、中盤に神秘体験、ラストはタクシードライバーという離れ技。ポールシュレイダーの作家性が色濃く出た作品。誰にも撮れない独創性。ラストカットも強烈な印象。2019年ベスト10に入れたい。

社会は矛盾に満ちている。それらを正すため一人の人間ができることなどほとんどない。人は無力だ。しかし、正すことができず絶望した人間が行き着く先は破滅しかないのか。直面する問題の大小はあれど、誰しもトラーの胸中に己を重ねることができる。磔刑を望んだトラーはマリアに救われるのだろうか。


静かなる叫び

2020-05-07 | 外国映画(さ行)
★★★★☆ 2009年/カナダ 監督/ドゥニ・ヴィルヌーブ

モントリオール理工科大学内の銃撃事件を描くヴィルヌーブ初期作。77分の尺の中で関係者のその後にまで迫り彼らの絶望と希望を静謐で、しかし力強い演出で描き切る。女性ばかりを銃撃した反フェミズムの犯人と、自身の無力さを悔いる男子学生。その「男性性」の対比がずしんと来る傑作。

凶行に到るまではガスヴァンサントの名作「エレファント」を想起させるのだが、本作の凄みは奇跡的に助かった学生のその後に迫っているところ。エンジニア志望ということで標的になった女子学生がどのような人生の選択をするのか。彼女の選ぶ道がどうか幸福でありますようにと願わずにいはいられない。