落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

風邪ひきました

2008年08月27日 | diary
モーレツにアタマ痛い。気分が悪い。

のを圧して3度めの『闇の子供たち』鑑賞(レビュー)。
ぶっちゃけそんな何回も観んといかんよーな映画じゃないんだけど、今日は阪本監督のティーチインがあるとゆーので、前もってチケットを予約して行って来た。
公開されて1ヶ月近く経ってるけど、こうして各地で舞台挨拶やティーチインを積極的にしていて、本人は「ホントはこんなマジメな人じゃない」なんて謙遜してるけどなかなかどーしてマジメな人なんだろーと思う。インタビューみてても「(答えが見つからないから)酒飲むんですよね」とかしんみりいってたりして、主人公南部(江口洋介)はホントに監督自らを投影したキャラクターなんだろう。南部も劇中でやたら酒ばっかし飲んだくれてたから。

ティーチインの内容そのものは過去のインタビュー(まとめ)とかなりカブッていてそれほど新しい話は出なかったし、そのうち公式サイトにでもレポートが掲載されると思うので詳しくは書かない。
ただ、観客とのやりとりを直に聞いていて、監督の覚悟がどれほどのものだったかをひしひしと肌で感じることはできた。難しいことかもしれないけど、周防監督が『それでもボクはやってない』をきっかけにして今後も裁判制度に取り組んでいくと宣言したように、阪本監督にも人身売買をはじめとする人権問題に続けて取り組んでいってもらえたらと思う。
あと、監督けっこうレビュー読んでるなってのもわかり。まあ読むよねえ。ココはパス制限かけてるから見れないけど。某ポータルサイトのペドファイルのレビューも読まれたんでしょーかね?誰が観たって自由なんだけどさあ。

タイ国際映画祭では上映が決まったよーですが、他の映画祭ではなかなか上映してもらえないらしー。理由はよくわからない。
タイ版トレーラー。これ編集した人、明らかに日本語わかってないね。そこはご愛嬌ってことで。
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上映は9月だそーで、また今すんごい政情不安になってますんで監督気をつけて行って来てくださいましー。

ペドファイルなんて変態はみんな犯罪者だ、売春なんて売るのも買うのも間違ってる、とか決めつけちゃうのは簡単だけど、現実問題は絶対そんな風には片づかない。
そーゆーことばっかし考えてるせいか、ここんとこタバコの量が激増中っす。むーん。
そしてコレが一段落したら臓器移植関係もちょっと勉強する予定でーす・・・。


上諏訪のショッピングモールにて。

阪本監督、終了後に出口に立って観客ひとりひとりに握手してました。
ぐりもしてもらったけど、指先までびっしょり汗をかいておられました。やっぱマジメなんじゃん(ちょっとスキになってたりします。だって好みやしー←おい)。

大丈夫か

2008年08月26日 | diary
週末観たぶんのレビューを昨日一気にアップしましたがー。
疲れたー。8本て観過ぎちゃうんかい。<自分
そんなに観る必要なんかないのに。それでも観たくても観れない映画がまだあったり。狂ってるー。誰か止めて。

観たい映画といえば3年前にアカデミー賞ドキュメンタリー部門賞を受賞した『BORN INTO BROTHELS:Calcutta's Red Light Kids(売春窟に生まれついて:コルカタ赤線地帯の子どもたち)』が、この秋やっと日本で公開される(邦題:未来を写した子どもたち)。
この作品受賞時にもかなり話題になって、なんでこれが公開されないのかとさんざんいろんな噂が飛び交いましたがー。3年も経ってなんで今?ってのはよくわからにゃい。
やはりドキュメンタリーでこの秋に公開される『ウォー・ダンス 響け僕らの鼓動』は去年東京国際映画祭で上映された作品(レビュー)。感動的なだけではなく映像的にも非常に美しい、芸術的な映画なのでできるだけたくさんの人に観てほしいと思う。

オリンピックも結局ほとんど観なかったし(お盆にちょこっとだけ観た)、なんか自分がどんどん世間から離れてってるよーな気がしてしょーがない今日このごろ。今さらですが。
こんな映画ばっかし観て&本ばっかし読んでて、いーのかなー?


蓼科にて。

エラの谷のダビデ

2008年08月25日 | movie
『アメリカばんざい』

2008年3月までに4000人を超えたアメリカ軍のイラク戦争戦死者。
入隊すれば奨学金がもらえて職業訓練が受けられ、たとえ怪我をしても補償があり、除隊後も年金がもらえると宣伝されるアメリカ軍だけど、実情はそんなに甘いものじゃない。
ベトナム戦争以後の帰還兵のPTSD発症率は驚異的な数字だが、彼らは国からなんのケアも受けていない。奨学金ももらえるのは申請者のうち4割。恩給だって月にせいぜい118ドル。除隊しても仕事がないから、アメリカの路上生活者の3割が帰還兵というていたらく。

しかしぐりが驚いたのはこの映画がなんと邦画とゆー事実。なんでだ?マイケル・ムーアとか喜んでやりそうなネタなのにねえ。
インタビューに答えてるのは全員アメリカ人で大半が帰還兵やその家族なんだけど、外国人である日本人スタッフによくぞここまで赤裸々に語ってくれたもんだと思う。いや、外国人だからなのだろうか?
それでまたみんなよく喋る。みんなすごく弁が立つ。というか素直。それぞれいいたいことがいっぱいあるんだろうけど、にしても論点が明確で聞いてて話が非常にわかりやすい。国は国民に嘘をついてる、戦争は正義なんかじゃない、自分たちは殺人なんかやりたくなかった、目の前で友だちを亡くしたり、罪もない市民を殺したり、そんな悪夢が常に自分たちを苦しめている、もうこれ以上誰かにそんな思いはさせたくない・・・。

そんな酷い経験をした帰還兵はどうなるか。
怪我の後遺症や悪夢から逃れるためにアルコールに溺れたりドラッグに奔ったり、完全に精神のバランスを崩したりして社会から転落してしまう。元が貧困層出身だから転落するのもあっという間である。行く先は路上生活あるのみ。捨て身で助けてくれる家族や友人がいないかぎり、彼らを待っているのは死しかない。国にとってもう戦場に出て行かない帰還兵など使い捨てのゴミでしかない。
これでもアメリカは自由と平等の国だなどといえるのか。そんなものは完璧な嘘である。欺瞞である。こんなことがまかり通る国には人権なんかない。あるなんていうことが間違っている。
てゆーかさ、戦争やめりゃあそれでいいんじゃないの?国民騙してまで戦争やんなきゃいけない国って、やっぱヘンですよ。

関連レビュー:
『告発のとき』
『華氏911』
『ジャーヘッド』
『ジャーヘッド アメリカ海兵隊員の告白』 アンソニー・スオフォード著

日々是決戦

2008年08月25日 | movie
『高三』

福健省のある高校の3年7組に1年間密着したドキュメンタリー。
中国は幼稚園でも学校でも寮制のところ多いですね。会社もか。広い国ならではとゆーべきか。
この学校の雰囲気は高校とゆーより予備校みたい。毎年3年生ばっかり教えてる王先生とゆー熱血教師が、ひたすら生徒を激しく鼓舞し、叱咤激励しつづける。子どもたちは朝もはよから夜遅くまで、机に文字通りかじりついて勉強してる。
でもどこの学校も同じでなかには落ちこぼれもいる。プレッシャーで逃げちゃう子、ネットカフェに入り浸って授業中も寮で寝こけてる子、恋愛にうつつを抜かす子。ひとりっ子政策の影響もあって親の期待も大きいから、子ども本人のストレスも並み大抵ではない。

上映後のトークショーで水野衛子氏もいってたけど、中国の学校にはクラブ活動とか情操教育とかいった要素がまったくない。オリンピックなんかで活躍してる選手はそれ専門の学校で訓練されたスペシャリストである。そうでない子はとにかく良い学校に進学して良い仕事に就いてお金を儲けて、とゆーものすごく画一的な価値観しか学校にはない。まだ中国が未成熟な国だからなのだろうけど、どれだけ中国が大きくてたくさん人間がいる国だとはいえ、将来それで大丈夫ですかー?とゆー危うさもすごく感じる。
ちなみに中国の大学受験は日本のセンター試験みたいな共通テスト一発勝負。受験時に志望校を申告して大学側が希望者から成績の良い順に入学者をピックアップするとゆー方式。これって絶対ムリありますてー。せめてアメリカのSATみたく年間何回か受験機会があればいーのに。一発じゃあねえ。そら逃げたくもなりますよ。

勉強しかしてない中国の田舎の高校生はみんな純真で、ぐりの目から見ても幼くていたいけで、こんな子たちがいったいどんな大学生になるのかうまく想像もつかないくらい。エンドクレジットに3年7組全員の合否が出て来たのには笑っちゃったけど、その後みんなどーしてるのかな?
劇中で歌われてた『那些花儿』はもとは誰の曲なんだっけ?中華ポップスを聴かないぐりでも聞き覚えがあるってことはすごいメジャーな曲のはずだけど、誰が歌ってたのかどこで聞いたのかが思いだせない。気になるー。

関連レビュー:『小さな赤い花』

沈黙

2008年08月25日 | movie
『山清水秀―息子』

もうすぐ死刑になる弟を助けるため、妻・秋月(胡淑麗フー・シューリー)と相談して生まれてくる赤ん坊を売ることにした阿水(甘小二ガン・シャオアル)。子どもを売っても賄賂に足りないので、妻を一年間貸してほしいという金持ちの提案にも応じることにしたのだが、金策がつかないうちに刑が執行されてしまったうえ、売血に手を出した阿水はエイズを発症してしまう。
『塵より出づる』の甘小二の2002年の作品。

出ました人身売買&HIV問題。
現代の貧困問題の定番二大テーマでしょー。これ。中国だけじゃなくて、どこでも。
しかしこの映画はすごいです。むちゃくちゃよくできてます。ぐりは『塵より〜』よりこっちのが好きですね。物語の完成度もこっちのが高い気がする。
惜しむらくはDV収録で画質がかなりアレな点でしょーか。内容としては相当に格調高い文芸映画なので、非常にそこがもったいないです。あ、あと胡淑麗が広東語喋りにくいのか台詞棒読みっちゅーのもちょっとアレかも。気になるってほどではないけど。
コレこそハリウッドなんかがリメイクするべきなんじゃない?昨今進出著しい中華スターなんか豪華に使っちゃってさ。だって人身売買とHIVですよー。格差社会ですよー。ワーキングプアですよー。臓器売買の話もちゃんと出てくるしー。どーよどーよ。李安(アン・リー)とか王穎 (ウェイン・ワン)あたりで。

物語はとにかくよくできてる。
昔ながらの家父長制にとらわれた長男である主人公は義務感で弟を助けようとするんだけど、そのことで妻も子も妹もみんな不幸にしているということに気がつかない。わからないわけじゃないんだけど、自分がどこにプライオリティを置くべきなのかを見誤っている。罪を犯した弟を助けることしか頭にないから、赤ん坊を助けたくても妹に勉強をさせてやりたくても、どうすればいいのか方法が見つからない。
結局貧しいってお金がないってことじゃない。古い因襲に縛られて心の自由をなくしてしまうことこそが、貧しさのもっとも大きな害悪だ。

監督がクリスチャンとゆーこともあってこの物語にも宣教師がでてくるけど、信仰そのものは物語の中ではそれほど重要度は高くなくって、世界観の中のひとつのアクセントとして機能している。宗教のこういう表現方法はなかなか自然でいいんじゃないかと思います。
ラストシーンがまた圧倒的に秀逸。コレどーやって撮ったんやろー?謎。

関連レビュー:
『闇の子供たち』1
『ルーシー・リューの「3本の針」』
『中国の血』 ピエール・アスキ著
『丁庄の夢―中国エイズ村奇談』 閻連科著