落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

結婚行進曲

2008年08月25日 | movie
『塵より出づる』

肺を病んで入院中の夫(張献民チャン・シャンミン)を支えながらひとり娘を育てている小麗(胡淑麗フー・シューリー)。家計が厳しく治療費や娘の授業料も滞納しがちな苦しい生活の中で、彼女の楽しみは教会の聖楽隊の稽古だった。
『山清水秀―息子』の(甘小二ガン・シャオアル)監督の2007年の作品。

中国に8000万人もクリスチャンがおるって知らなんだよー。驚きです。
この映画はたぶんクリスチャンが観ればもっと納得がいくんだろうけど、キリスト教に不案内なぐりにはイマイチうまくついてけませんでしたです。すごくいい映画なんだろうけど、入り込めなくてさー。題材はいいのでもったいないです。とても。
なんかいろんな部分があと一歩!なんだよね。胡淑麗の表情が常に仮面をかぶったようにそらぞらしいのが意味不明だし、カメラワークも必要以上に引きすぎてたり寄りすぎてたり、結局どーしたいのかがよくわからなかったり。
登場人物の相関関係の描写が希薄だったのがいちばん惜しいところかな。病院で「友だちや家族に工面してもらいなさい」とまでいわれて支払いを迫られてるのに、ヒロインがなぜそれをしないのかがどーしても引っかかったままになってしまう。その割りには最後にちゃんとお葬式だしてるし。お金どしたん?みたいな。

ホントにいい映画なんだけど、非常に惜しい、観ててなんだか困ったなあと思う作品でした。
ただし、これまで決して映画に描かれてこなかった中国が表現されてるという部分では必見の1本には違いないです。

雪は降る

2008年08月25日 | movie
『最後の木こりたち』

2005年に伐採が停止された黒竜江省の森林伐採地の最後の冬に密着したドキュメンタリー。
音楽なし、テロップ・ナレーションなし、いっさいの説明を取り払った純粋な記録映像。監督はロケ地の出身で登場する作業員たちは幼少時代の友人でもあるそうだ。

いちめん銀世界に凍りついた森の中、馬をあやつり粗末な橇で伐り出した木材をひたすら運ぶ男たち。あまりの過酷さにときどき馬が死ぬ。死んだ馬はその場で皮を剥がれて解体され、作業員たちの食事になる。わずかな日当で肉体労働に従事する彼らにとって、馬は道具であり相棒であり食物でもある。
食べて眠って働いて、話すことといえば家族の話、恋しい少女の話、お金の話。番小屋にはテレビもラジオも何もない。寝具と衣類とわずかな台所道具。生きるために最小限必要とされるものしかない。
春になって暖かくなって家に帰るまでの期間限定の、男だらけのむさ苦しい生活だけど、ただしんどいだけって感じもしない。飲んで騒ぐわけでもないのに男だらけの小屋はなんだかほっこり楽しそう。
でももうその暮らしは終わってしまった。政府がこの山での伐採を禁止してしまったから。彼らは今どうしてるのだろう(東京フィルメックスQ&A)。

ここまで純然たるドキュメンタリーも珍しいってくらい、主観を感じさせない作品。途中微妙に眠くはなったけど、個人的にはこれはこれでいいと思います。音とかかなりテキトーだったけどそれも味ってことで。
監督の本職は版画作家だそーで、どーりでなーと納得でしたです。

ピアノ王子参上

2008年08月25日 | movie
『言えない秘密』

父(黄秋生アンソニー・ウォン)と二人暮らしの天才ピアノ少年・湘倫(周杰倫ジェイ・チョウ)は、転入した音楽学校で神秘的な美少女・小雨(桂綸鎂グイ ・ルンメイ)に出会ってひと目で恋に堕ちるのだが、謎めいた彼女は授業に出たり出なかったりでなかなか会えない日が続き・・・。

んんんんんんー。
これーはー・・・アイドル映画?かなー?すーんごい内容薄い!よね?
見どころといえば淡水中学やら周辺のロケ地の風光明媚な景色を華麗にとらえた李屏賓(リー・ピンビン)のカメラワーク、ジェイの即興演奏の妙技、桂綸鎂やら曾愷[王玄](アリス・ツォン)の制服コス?他になんかありましたっけね?
まあだから見せたいモノはすごいわかりやすいんだけど、そこ興味なかったらもうどーすればいーんだかー?って感じで。ぐりだって学園ロマンス嫌いじゃないし、ラブファンタジーもとくに趣味じゃないけど、それでもこの映画はちょっと・・・ジェイのファンと桂綸鎂のファン以外は観るとこなさすぎでーす(爆)。VFXもショボすぎますし。

ぐりは完全に桂綸鎂目当てで観にいったけど、清楚に見えて何気に個性派な彼女のキャラをあんまし生かしきれてなかったよーに見えて残念至極。
ほうぼうでずいぶん女らしくなったといわれる彼女ですが、大人になって稲森いずみに似てきたのはこはいかにー。

変態三国人inトキオ

2008年08月25日 | movie
『TOKYO!』

ニューヨーク在住のフランス人監督ミシェル・ゴンドリー、フランスの異才レオス・カラックス、韓国の若き名匠ポン・ジュノがそれぞれ東京を舞台に描いた3本からなるオムニバス映画。
「インテリア・デザイン」:自主製作で映画を撮って上映しているアキラ(加瀬亮)といっしょに上京してきたヒロコ(藤谷文子)。とりあえず友人アケミ(伊藤歩)の1DKのアパートに転がり込むが、新居は見つからずアルバイトに忙しいアキラともすれ違い、徐々に孤独になっていく。
「メルド」:東京のマンホールから突如現れ、通行人にしたい放題の狼藉を働いては去っていく怪人メルド(ドニ・ラヴァン)。やがて逮捕起訴されるものの、意味不明な証言を繰り返す彼の言動に日本中が論争と混乱に巻き込まれる。
「シェイキング東京」:10年間一歩も家から出ずに暮らす男(香川照之)。いつしかTVも見なくなった彼は、家の中を完全に整理整頓し、立ったまま食事をし、便器に座って眠り、山積みの本を読み続けるという生活に満足していたのだが・・・。

うーむ。やっぱ映画監督って、変態なんだね。変態じゃなきゃできないのかしら?どーかな?
とりあえずこの3人は間違いなく立派なド変態だよね。けど許す。天才だから。ははははは。
ちょっと前までは外国人が撮った日本が舞台の映画ってサブい勘違いモノが多かったけど、この映画はさすがにまったくそういうズレは感じさせないです。そこはスゴイですね。よく知ってるなあって思う。マジで。それぞれ監督自らシナリオも書いてるみたいだけど、ホントにー?って思うもん。東京に住んでる人間自らが常日頃なんだかなあ?って思ってることがすごくうまく表現されてます。
ただ‘東京’というモチーフに関していえば、「インテリア・デザイン」がいちばんよく描けてるかな。あとの2本は東京というより日本社会全体をモチーフにしてるように見えて、東京に特化した物語にはなってないかも。

ぐりがいちばん気に入ったのも「インテリア・デザイン」。かわいくって罪がなくって、いかにもゴンドリーらしい、観てて純粋に楽しいラブファンタジー。こういうの好きなんだよねえ。ウフフ。
「シェイキング東京」もおもしろかったし、意外なディテールにピリッと風刺が効いてるところなんかすごくいいけど、観てる間じゅう「ごみはどーしてんのかな?」なんとゆーどーでもいいことが無茶苦茶気になって、物語になかなかうまく入り込めなかった。
「メルド」もいいたいことはすごく伝わるんだけど、テーマがちょっと大上段に構えすぎかなー?それで短編にまとめるためにいろいろ頑張ってるところに微妙に無理があるよーな。派手な展開の割りにちょっと退屈な仕上がりになってしまってるのがもったいない。

まあでもこのメンツで3本パックはやっぱりおいしいです。キャストも豪華だし。妻夫木聡とか大森南朋とか竹中直人なんか出てるの知らなんだよ。伊藤歩はむちゃくちゃハマりすぎてて誰かわからんかったっす(笑)。
けどたぶん役者的にいちばんおいしかったのは加瀬亮と藤谷文子じゃないかな?本人の持ち味が最大限に生かされててかつオシャレで魅力的でとっても人間的なキャラクター描写。そういう意味でも「インテリア・デザイン」がいちばんいい出来じゃないかと思います。

花はどこへ行った

2008年08月25日 | movie
『小さな赤い花』

家庭の事情で全寮制の幼稚園に入園した4歳のチアン(董博文ドゥン・ボウェン)。食事、昼寝、手洗いから排泄までを画一的に管理され、「赤い花」のポイントを稼げた子が‘良い子’と評価される園で、マイペースなチアンは孤立していくのだが・・・。
『東宮西宮』『緑茶』『我愛你 ウォ・アイ・ニー』の張元(チャン・ユアン)の2006年の作品。
張元といえば今年初めに違法薬物所持で捕まってますけど、処分てどーなったんでしたっけね?文字通り問題児作家ですわねー。
ぐりはこの人の作品てこの3本しか観てないんですが、今のところ気に入ってるのは『東宮西宮』くらいかなー?他のも観るべき?と思いつつ放置してます。

「チアン、四歳─たった1人の反乱」なんてキャッチがついてますが、そーゆー話ではないですね。まったく。4歳ですもん。反乱もクソもないっすよ。
とにかく全編ものすごく淡々としていて、個性的とゆーより単に要領の悪いチアンくんがどんどん浮いてく様をただじとーっと撮ってるだけ。余計な説明とかいっさいなし。なくたって、ただのふつうの子どもを家畜か軍隊のよーに管理することのバカバカしさがちゃんと伝わる。
ぐりも小さいときから協調性ゼロの問題児だったんで、無自覚に周囲を混乱させるチアンくんに妙に感情移入してしまったよ。4歳なんてまだ主体・客体なんて意識が芽生えてないから、自分が周りから浮いてることに気づきはしても対応はできない。けどそれこそ“空気読め”なんて勝手な大人の都合ですからー。

日本みたいになんでも「個性」で片づけるのが正しいわけじゃないけど、この映画に描かれる教育は既に「教育」の意味をなしてない。教師=お上に都合のいい人材だけ育てたいなんて、それってただの調教でしょう。
そうやって国民を無個性化して意識水準を落としてっても結局国のためにはなんの利益にもならないのは某大国で既に証明済み。政府はやりやすいかもしらんけど、国民は政府のために生きてるわけじゃないからね。当たり前ですけど。
幼稚園が舞台なのに、美術や衣装の色が暗くて地味で、ものすごくストイックな色彩構成がオシャレ。まあ子どもはわざわざチャラチャラ飾りたてなくても可愛いってことですかね。
途中ちょっと冗長でしたが、今の中国の迷走の一端を知るにはいい映画だと思います。