OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

俺はモブレー信者

2006-04-04 18:34:53 | Weblog

昨日はジャッキー・マクリーンの訃報で、若干取り乱したりもしましたが、本日はあらためて合掌です。あぁ、思えばお気に入りのジャズメンがどんどんあの世に召されているなぁ……。

諸行無常の響きありですが、本日は私が心底好きなこの1枚を――

Byrd In Flight / Donald Byrd (Blue Note)

ドナルド・バードはハードバップど真ん中の黒人トランペッターですが、もちろんクリフォード・ブラウンほどの完璧さも無く、リー・モーガンのようなアクの強さも無く、マイルス・デイビスのような唯我独尊でもありません。

しいて言えば王道派とでも申しましょうか、モードもジャズロックもきちんと演奏し、1960年代後半からはフュージョンやファンク路線にまで手を出してヒット作を出していますが、どこか安心して聴けるところが魅力です。

このアルバムは1960年にブルーノート・レーベルに残した録音を纏めて作り上げられたジャズ喫茶の人気盤で、メンバーはドナルド・バード(tp) の当時のバンド・レギュラーだったデューク・ピアソン(p) とレックス・ハンフリーズ(ds) を核にして其々3曲ずつ、ハンク・モブレー(ts) とダグ・ワトキンス(b) というジャズ・メッセンジャーズ時代の仲間を、またこれも盟友というジャッキー・マクリーン(as) に新鋭のレジー・ワークマン(b) を迎えたという、このクレジットを眺めただけで、ジャズ者ならばワクワクしてくる予感に満ちています。その内容は――

A-1 Ghana (1960年1月25日録音)
 ダク・ワトキンスの強靭なベース、レックス・ハンフリーズの歯切れの良いドラムスに導かれ、ラテンとアラビアが入り混じったエキゾチックなテーマが、まず魅力です。もちろんこれはドナルド・バードのオリジナルで、アドリブパートは王道の4ビートで快適にグルーヴする名曲です。
 先発のソロは曲のキモをしっかり掴んだ作者自身のトランペットが中庸な歌心を発揮し、続くデューク・ピアソンはトミー・フラナガン(p) の影響力が強いセンスの良さを聴かせますが、ここはやっぱり、ハンク・モブレーです♪ 待ってましたとばかり魅惑のモブレー・フレーズを連発して、本当に楽しいジャズを完成させていくのでした。

A-2 Little Boy Blue (1960年7月10日録音)
 ドナルド・バードが一人舞台のバラード演奏です。ベースはレジー・ワークマンに交代していますが、リズム隊のコンビネーションは不動ということで、デューク・ピアソンも綺麗なタッチで魅惑の伴奏を聞かせてくれます。肝心のドナルド・バードは、あまりにも正統派すぎて……。

A-3 Gate City (1960年1月17日録音)
 デューク・ピアソンが作曲した楽しさ満点のゴスペル・ハードバップです。とにかくテーマ演奏からして、リズム隊が絶妙なノリとキメを聞かせてくれますし、先発でアドリブ・ソロを披露するドナルド・バードは、最初からツボを刺激するフレーズを連発してくれます。
 そして我らがハンク・モブレーこそ、こういう曲調・テンポは十八番ですから、全くソツが無い展開に物足りなさを感じるほどです。さらにデューク・ピアソンのピアノ・ソロのバックでは定番のゴスペル・リフが付けられて、演奏は素直に大団円を迎えています。

B-1 Lex (1960年1月25日録音)
 このアルバムで最高の演奏がこれだと、最初から結論を言ってしまっても過言では無い名演です。作者はもちろんドナルド・バードで、この快適なテンポ、楽しい曲調、調子の良いリズムとビート、ファンキーなキメ! とにかく満点なハードバップ曲になっています。
 当然、アドリブ・パートでは全員が歌いまくり♪ 先発のドナルド・バードが本領発揮の歌心をたっぷり披露すれば、ハンク・モブレーは独特の「間」とファンキーな「味」を巧みにブレンドした名人芸を聞かせます。とにかく吹けば吹くほどに素晴らしいフレーズが泉のごとく溢れるという表現しか浮かばないほど、ここでのハンク・モブレーは楽しくて、もう最高です! こんな風に吹けるテナー奏者は、もう二度と出現しないでしょう♪ ある意味ではこの人も、唯一無二の天才だと思います。

B-2 Bo (1960年7月10日録音)
 お待たせしました、ここでようやくジャッキー・マクリーンの登場になりますが、曲は真っ黒なファンキー節が全開したデューク・ピアソンのオリジナルです。
 もちろんジャッキー・マクリーンは、あのギスギスした音色でテーマ吹奏の段階から目立ちまくり♪ アドリブ・パートでも頑張っていますが、残念ながらハンク・モブレーとは役者が違いすぎて……。

B-3 My Girl Shirl (1960年7月10日録音)
 そのジャッキー・マクリーンが面目躍如というのが、この曲です。これもデューク・ピアソンのオリジナルですが、このビートが強くて尚更せつない曲調がマクリーン節にぴったり♪ とかにく泣きのフレーズがキメ! アドリブに突入したその瞬間から、グサリと突き刺さってきます。ちなみにこのパートは全部が覚えやすいフレーズばかりですので、ジャズ喫茶では思わず口ずさんでしまうお客さんが大勢いたほどです。
 肝心のリーダー、ドナルド・バードもなかなかの快演ですが、ジャッキー・マクリーンに押され気味というところでしょうか。

ということで、これは名盤ガイド本にもあまり登場しないと思われる作品ですが、モダンジャズの王道を楽しむには最適の1枚で、ハンク・モブレー信者には絶対ですし、マクリーン中毒者にもオススメです。

それと意外に健闘しているのがレックス・ハンフリーズのドラムスで、的確なキメと煽り、出しゃばらないと思いきや、極める時は決めるという潔さが魅力の隠れ名手ですので、要注意ですね♪

コメント (1)
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