今日は雪国の春とは思えないほど、暑かったです!
もうほとんど初夏というか、梅雨明け!? 川は雪融け水で濁流になってますが、降雨で水害になっている地方もあるとかで、全く早々と異常気象の幕開けでしょうか……。
今年も暑い夏になりそうだという予感では、ちょっと気が早い涼しいアルバムもOKでしょう――
■Bossa Antigua / Paul Desmond (RCA)
白人アルト奏者のポール・デスモンドは、その唯一無二のソフトな音色と都会的な歌心が魅力で、ジャズファン以外からも認められている人気者!
ですから、普段はモダンジャズ黄金期に世界一の人気ジャズバンドだったディブ・ブルーベック・カルテットの看板スタアとして活動していても、自己のリーダー盤を出す機会に恵まれているは当然で、また、その出来栄えも期待を裏切らないものになっています。
このアルバムもそういう1枚で、タイトルどおりにボサノバを演奏したという、それだけで魅力充分、聴く前から買ってしまうというレコード会社の策略にまんまとノセられて、心底満足という困った作品です。
録音は1964年、メンバーはポール・デスモンド(as)、ジム・ホール(g)、ジーン・ライト(b)、コニー・ケイ(ds) という、センスの塊のような粋人揃いです――
A-1 Bossa Antigua (1964年7月28日録音)
ジム・ホールのイントロからして哀愁が漂い、歯切れの良いコニー・ケイのドラムスに導かれ、ポール・デスモンドがソフトな音色で伸びやかに魅惑のテーマを吹奏しますが、それだけで満足してしまいます。
あぁ、この涼しさ、安らぎは筆舌に尽くしがたいものがありますねぇ~♪ とにかく聴いて下さいっ! としか言えませんが、薫り高いアイスティが欲しくなります。
A-2 The Night Has A Thousand Eyes (1964年7月29日録音)
モダンジャズでは定番の人気曲を、ここではボサノバで演奏するというニクイことをやっています。もちろんポール・デスモンドのクールでソフトな情感は全開ですし、ジム・ホールもバックにソロに名人芸を披露していますが、実はビートが擬似ボサノバで、ジャズ・ロック調になったりもするあたりが隠し味でしょうか? 素敵です♪
A-3 O Gato (1964年8月20日録音)
コニー・ケイのリムショットが冴えたイントロからジム・ホールがお膳立て、そしていよいよポール・デスモンドが登場という展開ですが、これもボサノバというよりはジャズノバとでも申しましょうか、ジャズ味が強く出た演奏です。と言ってもボサノバ本来の洒落た味はきちんと表現されていますので♪
A-4 Samba Cantina (1964年7月28日録音)
おぉ、これこそ哀愁のサンバ♪ 歌謡曲味が仄かに漂うあたりが素敵です。リズム隊もシャープな好演ですし、なによりポール・デスモンドの歌心が絶妙で、泣きの美メロが、これでもかと溢れ出ています♪ 本当にアドリブでしょうか……、心にジンワリの名演だと思います♪
また、ジム・ホールも地味に良いんですよねぇ~♪
B-1 Curacao Doloroso / 悲しみキュラソー (1964年8月20日録音)
ポール・デスモンド作の名曲で、透明感のある曲想に自身のソフトなアルトサックスがぴったりという、奇跡の演奏です。
これもボサノバというよりもジャズノバで、アドリブには厳しい部分が散見され、特にジム・ホールは切り詰めた表現の中に無類の歌心を披露しています。そして後半ではポール・デスモンドと絡みつつテーマを自在に変奏していくという、それがフェードアウトしてしまうところが、たまらなく勿体無いです。
B-2 A Ship Without A Sail (1964年7月29日録音)
ふすすすすぅ~、というサックスのサブトーンの魅力、それを活かしたポール・デスモンドの吹奏がたまらなく素敵です。もちろん天才的な歌心も存分に発揮していますし、ジャズの真髄という鋭いツッコミも披露しての快演です。
しかもそれが、余裕の美しさなんですねぇ♪
ただしリズムが途中からドドンパになるのは減点です。
B-3 Alianca (1964年7月30日録音)
アップテンポの演奏で、リズムはほとんどジャズです。
ポール・デスモンドは相変わらず流れるようにアドリブ・メロディを展開させていきますが、ジム・ホールも厳しい姿勢を崩さずに名人芸を披露していますので、ラストテーマがたまらなく愛くるしいものになっています♪
B-4 The Girl From East 9th Street (1964年8月20日録音)
アルバムの最後を飾る甘美な演奏です。これはポール・デスモンドのアドリブは全てが「歌」という証明でしょう。しかもここでは焦らしのテクニックというか、聴き手が望む「泣き」を出し惜しんで、尚且つ泣かせる妙技を披露しています。
ジム・ホールもその辺りを上手く受け継ぐソロを聞かせますが、それでも演奏がダレないのは、コニー・ケイのシャープなドラムスによるところが大きいと思います。
ということで、このアルバムは全篇がボサ・ビートに彩れた快感盤♪ 聴いているうちに涼しくなってきますし、その場の和みがジンワリと広がっていく空間にいる喜びが、もうたまらない魅力です。
出来ればスピーカーでお楽しみ下さい。アイスティが欲しくなりますよ♪