土日、たぶん、今年最後の休みになるだろうと思い、映画を観たり、ネタを仕入れたりしたした有意義な休日となりました。
それにしても1年とは早いものです。アインシュタイン博士の相対性理論からすれば、時間の流れよりも自分の行動が鈍くなって、そう感じるのでしょうか……?
ということで、本日は――
■Ballads & Blues / Milt Jackson (Atlantic)
ミルト・ジャクソンは言わずと知れたアドリブの大名人! MJQ(Modern Jazz Quartet)での活躍は、もちろん素晴らしいですが、自身のリーダー盤も良いものばっかりで、これっ、というのを選ぶのに苦労するほどの苦笑いですよ。
で、本日の1枚はタイトルどおり、特にミルト・ジャクソンが本領を発揮するブルースと歌物バラードに拘った作品集♪ しかも異なる三種のグループによるセッションから纏められた丁寧な作りにも、好感が持てます。
まず最初のセッションは1956年1月17日の録音で、メンバーはミルト・ジャクソン(vib)、ジョン・ルイス(p)、スキーター・ベスト(g)、オスカー・ペティフォード(b)、ケニー・クラーク(ds)、そしてラッキー・トンプソン(ts) というビバップ色が強い面々です(グループA)。
続く同年1月21日の録音はミルト・ジャクソン(vib) 以下、ジョン・ルイス(p)、バリー・ガルブレイス(g)、オスカー・ペティフォード(b)、ケニー・クラーク(ds) を中心に、フルートやオーボエ、クラリネット等々が加わった10人編成のバンドとなり、ラルフ・バーンズのアレンジがミソ(グループB)♪
そして最後の録音は同年2月14日、ミルト・ジャクソン(vib)、バニー・ケッセル(g)、パーシー・ヒース(b)、ローレンス・マラブルds) という擬似MJQというか、メンバーからして西海岸でのセッションでしょうか(グループC)?
というように彩り豊かな演奏は――
A-1 So In Love (1956年1月21日録音 / グループB)
木管を活かした柔らかなアレンジの中でミルト・ジャクソンの歌心が冴え渡った名演! 曲は美しいメロディが人気のスタンダードですが、それ以上の美メロが出るアドリブには陶然とさせられます。
実はラルフ・バーンズのアレンジは香りが高くて、けっこう嫌味なところもあるんですが、ミルト・ジャクソンの落ち着いたヴァイブラフォンの響きが全てを満足させてくれるでしょう。
ギターのバリー・ガルブレイスが使うコードワークにも、ハッとさせられます。
A-2 These Foolish Things (1956年2月14日録音 / グループC)
これまた「泣き」が染み入る名曲・名演ですから、たまりません。バニー・ケッセルが作る素敵なイントロに導かれてミルト・ジャクソンがジンワリと奏でるテーマメロディの素晴らしさ! 本当に泣けてきます。
落ち着いたスローなグルーヴを支えるローレンス・マラブルのブラシも流石ですねぇ~。決して派手な演奏ではないのですが、中盤からグッとビートを強くしていくところは、ジャズの醍醐味でしょう。ミルト・ジャクソンも縦横無尽にアドリブしています♪
A-3 Solitude (1956年1月21日録音 / グループB)
デューク・エリントンが書いた有名なメロディですから、ミルト・ジャソンも歌心満点の本領発揮♪ ラルフ・バーンズの緻密なアレンジが邪魔になるほどジコチュウのアドリブ天国を現出させています。
つまり、こういう演奏ほどシンプルなバンド編成が好ましいと思わざるをえません。するとジョン・ルイスが素敵な素描みたいなピアノでアドリブをやってくれるんですねぇ~~♪ 和みます。
A-4 The Song Is Ended (1956年2月14日録音 / グループC)
楽しいメロディを軽快な4ビートで演じ、ミルト・ジャクソンはもちろん素晴らしいのですが、バーニー・ケッセルが実に最高なギターを聞かせてくれます。ハズレそうで外れない、ゴマカシのようでごまかさない細かいフレーズと豪快なコード弾き! ちょっと真似出来ないと思います。
するとミトル・ジャクソンが、ちょっと熱くなったようなアドリブを続け、そのまんまラストテーマに入っていくところが、憎めません♪ なんか最初よりテンポが速くなってしまったような!?
A-5 They Didn't Belivev Me (1956年1月21日録音 / グループB)
これも軽快なテンポの演奏ですが、ラルフ・バーンズのアレンジが??? しかしミルト・ジャクソンが強烈な存在感を示しますし、アドリブ先発のジョン・ルイスが良い味出しまくり♪ 木管アレンジとの共存共栄が見事です。
B-1 How High The Moon (1956年1月17日録音 / グループA)
勿体ぶったイントロから緩やかなテーマのアンサンブルが、なかなか絶妙な演奏です。もちろんそれはテンポアップして燃えるアドリブパートへの布石なんですねぇ。
ちょっとミエミエの演出が??? とは言えリズム隊の要としてキメを連発するジョン・ルイス、堅実なビートを送り出すスキーター・ベストに支えられ、ミルト・ジャクソンとラッキー・トンプソンがグイノリのアドリブを聞かせてくれます。
またオスカー・ペティフォードの凄いベースソロとケニー・クラークのブラシもジャズを聴く喜びかと思います。
B-2 Gerry's Blues (1956年2月14日録音 / グループC)
ようやくブルースです♪
バーニー・ケッセルとローレンス・マラブルが作る快適なイントロからミルト・ジャクソンのヴァイブラフォンが響いてくれば、もう辺りはブルースがいっぱい! お約束のフレーズを、これでもかと聞かせてくれるんですから、たまりません♪
パーシー・ヒースが強烈な4ビートのウォーキングから粘っこいアドリブに入るところもハードバップの醍醐味ですし、バーニー・ケッセルの余裕のギター、ローレンス・マラブルの大技・小技も実に楽しいです。
B-3 Hello (1956年1月17日録音 / グループA)
和みのイントロからミルト・ジャクソンとラッキー・トンプソンがシブイ会話を交わす夜のブルース♪ というかブルース歌謡曲でしょうねぇ♪ ちなみに作曲はミルト・ジャクソンです。
ミディアムテンポのグルーヴィなビートも素晴らしく、ミルト・ジャクソンは力強く、そして優しくハードボイルドなアドリブを披露すれば、ラッキー・トンプソンはブカブカしながらも芯の強いテナーサックスを聞かせてくれます。
短い演奏時間が残念……。
B-4 Bright Blues (1956年1月17日録音 / グループA)
オーラスもミルト・ジャクソンが書いた正統派ハードバップのブルース大会です。もちろんアドリブにも十八番のフレーズがテンコ盛り♪ ちょっとリズム隊が古臭い感じなんですが、ラッキー・トンプソンが登場すると、それがピタリとキマッていきますから、結果オーライでしょうか。
そしてオスカー・ペティフォードの豪腕ベース、スキーター・ベストのギターソロが味わい深いく、さらにジョン・ルイスのピアノは音数を切詰めていますから、これはっ!?
つまり、こんなん聴いていると昨日と同じく、カウント・ベイシーのスモールコンポでも取り出したくなる私なのでした。
ということで、A面は歌物、B面はブルースの雰囲気とうバラエティ盤です。あまりジャズ喫茶では鳴らないアルバムかもしれませんが、逆に言えば、それはお茶の間向けの証明かも……♪
実際、些かショボイ雰囲気の録音が、自宅の小音量鑑賞にはバッチリじゃないでしょうか? もちろん和みがいっぱいですからねっ♪