なんだか我国の為政者は、ロクな筋書きが書けませんね……。現在のドタバタだって、台本があるんでしょうが、マスコミだって分かっていて猿芝居を止めないというテイタラクが情けない!
自分に言い聞かせる言い訳ほど、惨めなものもないでしょう。
国民をバカにする権力者は、潔く去ってもらいたいと思う他なし!
ということで、本日は怒りを収めるアルパムを――
■Bud Shank Plays Tenor (Pacific Jazz)
バド・シャンクは西海岸派を代表するアルトサックス奏者ですが、その持ち味はアート・ペッパーのような鋭さよりも、むしろサラリとして爽快な魅力かと思います。
そういうバド・シャンクがタイトルどおり、テナーサックスだけを吹きまくって丸ごと1枚作ったのが、このアルバムです。
録音は1957年11月27日、メンバーはバド・シャンク(ts) 以下、クロード・ウィリアムソン(p)、ドン・プレル(b)、チャック・フローレンス(ds) という当時のレギュラーバンド♪ 本当に気心の知れたリズム隊と組んだワンホーン盤で、演目も全てが有名スタンダードいう、嬉しい選曲です――
A-1 Thou Swell
自らのテナーサックスで作り出す魅惑のイントロから快適なテーマ吹奏に入っていくあたりで、グッときます。失礼ながら、幾分、ドタバタしたリズム隊も、ここでは良い方向に作用しているようですねぇ。
そしてアドリブパートでは、バド・シャンクが持ち前の分かり易くて爽快な歌心を披露していますが、やはりアルトサックスに比べるとキレがイマイチ……。
ただし、そうしたモタレが案外とクセになったりします。
また個人的には大好きなクロード・ウィリアムソンが、ちょっと不調ながらも実力の片鱗を聞かせてくれますし、チャック・フローレンスのドタンバタンのバスドラが、けっこう良い味だと思います。まあ、このあたりは十人十色でしょうか。
A-2 Tenderly
だいたいはスローテンポが多い曲なんですが、ここではスインギーな演奏に仕立てながら、バンド全体で大らかなノリを聞かせてくれます。そして、なんといってもクロード・ウィリアムソンが伴奏にアドリブに、素晴らしいですねぇ~♪
肝心のバド・シャンクは相変わらずモタツキながらも、随所にテナーサッスならではの音色の魅力や白人系の流麗なフレーズを積み重ね、「歌」の魅力を感じさせていくのでした。
A-3 Over The Rainbow
スローテンポの演奏で、有名なメロディをかなり崩して吹奏するバド・シャンクが良い感じ♪ フワフワな音色とフレーズの妙が、たまりません。
似たようなアプローチではスタン・ゲッツに近い感じもしますが、ゲッツのような飛躍的なイマジネーションの発露よりは、むしろ分かり易いメロディフェイクが大きな魅力です。
クロード・ウィリアムソンのピアノも美し過ぎ♪ あぁ、やっぱり良いです。
A-4 Long Go And Far Away
急速テンポの演奏で、爽快にテーマを吹きまくるバド・シャンクが本領発揮! もちろんアドリブパートも流麗で痛快なフレーズの連続です。
リズム隊も凄いノリで、クロード・ウィリアムソンは一瞬ですが、ホレス・シルバー状態にまでイっています♪ チャック・フローレンスのドラミングもカッコイイ! 終盤は、この人のための演奏になっていますよ。
B-1 I Never Knew
B面ド頭も急速アップテンポの演奏で、バンド全体の勢いが、まず素晴らしいと思います。バド・シャンクも臆することなく、ドライブ感満点のテナーサックスを吹きまくっていますが、やはりアルトサックスに比べるとモタツキは否めません。
しかしそこを補っているのが、独特の軽さがあるフレーズの積み重ねでしょうか、リズム隊の上手い煽りと呼吸も合って、なかなかの好演だと思います。
チャック・フローレンスのクセの強いドラミングは賛否両論でしょうか……。
B-2 All The Things You Are
これもアップテンポの演奏ながら、余裕を感じさせるテーマの吹奏からアドリブに入っていくバド・シャンクの手慣れたところが、流石というか、マンネリというか……。
しかしバンド全体のノリは、なかなかにグルーヴィ♪ クライマックスではチャック・フローレンスのドラムスと一騎打ちを演じるバド・シャンク! このあたりはハードバップを超越したジョン・コルトレーン&エルビン・ジョーンズと同質のジャズ魂を感じてしまうのでした。
如何にもというラストテーマの変奏も、ジャズっぽいです。
B-3 Body And Soul
スカスカした、白人系テナーサックスならでは音色の魅力を活かした、バド・シャンクが渾身のバラード演奏です。強いアクセントをつけたリズム隊の存在感も、特にクロード・ウィリアムソンの繊細な表現は最高だと思います。
しかし、まあ、それゆえに物足りないところも……。
B-4 Blue Lou
無伴奏でシンプルにテーマを吹くバド・シャンク♪ そしてベース、ドラムス、ピアノと徐々に入ってくる伴奏の妙♪ 演奏はいつしか快適なスイングテンポになって、バド・シャンクは魅惑のフレーズを連発していきます。
ただし中盤に感じられる若干の弛み残念……。
しかしリズム隊の強いビート感と爽快なグルーヴは流石!
ということで、ハードバップ愛好者には明らかに物足りない演奏かもしれませんが、所謂レスター派の中毒を患っているのならば、これは宝物の1枚でしょう。
まあ、本音を言えば、この企画でアルトサックスを吹きまくってくれた方が良いと思えるのですが、それは流石にマンネリということなんでしょうねぇ。
しかしそうしたマンネリズムこそ、ジャズ者が求める至福じゃなかろうかと……。
些か贔屓の引き倒しになってしまいましたが、決して悪いアルバムではありません。個人的には「Over The Rainbow」と「Long Go And Far Away」に惹かれています。