早朝から仕事の連絡とか、全然、和めない日曜日でした。ケイタイなんか発明した奴を怨みた~い!
ということで、ジャズの基本的な素晴らしさを感じる、これを――
■Miles Davis In Europe (Columbia)
トランペッターはカッコイイ!
それはジャズの花形プレイヤーですから、まあ、当たり前なんでしょうが、そのスタイルのカッコ良さを知らしめてくれたのが、このマイルス・デイビスのアルバムでした。
とにかくビシッとキメたスーツ姿のマイルス・デイビスが、スポットライトを浴びながら、体を反らせてトランペットを鳴らす、そのクールなカッコ良さ!
このジャケットを見たのは、まだロクにジャズも聴いていない時期の私でしたが、当にモダンジャズのカッコ良さだと直感させられたんですねぇ~♪
内容はタイトルどおり、マイルス・デイビスが正統派4ビートの素晴らしいバンドを率いて演じたライブ盤です。
録音は1963年7月27日、フランスのアンチーヴジャズ祭での音源で、メンバーはマイルス・デイビス(tp)、ジョージ・コールマン(ts)、ハービー・ハンコック(p)、ロン・カーター(b)、トニー・ウイリアムス(ds)という、言わずもがなの面々です――
A-1 Introduction
当然ながらフランス語によるバンド紹介ですから、エルビアン・クックがピアノなんですねぇ~。思わずニンマリです。
A-2 Autumn Leaves
皆が大好き♪ マイルス・デイビスが十八番のスタンダードですが、原曲はもちろんフランスのシャンソンですから、二重の大サービスを狙ったんでしょうか? これにもニンマリです。
マイルス・デイビスはミュートで、思わせぶりなメロディフェイクの至芸を披露していますが、絡みつくようなロン・カーターのベースを筆頭に、暗黙の了解に満ちたリズム隊が素晴らしいですから、緊張感に満ちた展開にはゾクゾクしてきます。トニー・ウイリアムスのブラシも実に良いですねぇ~♪
そして演奏が盛り上がったところで登場するのが、ジョージ・コールマンというわけですが、その刹那に激を飛ばすトニー・ウイリアムスのシンバル&タムが、若造の憎たらしさで最高! もちろんビートはグイノリに変化していますから、ジョージ・コールマンも全く油断出来ない雰囲気で熱いフレーズを迸らせるのです。
またハービー・ハンコックも熱演で、分かり易いフレーズで真っ向勝負の姿勢は潔いかぎり! もちろん個性は充分に発揮しています。う~ん、トニー・ウイリアムスが小賢しいぞっ!
するとマイルス・デイビスが抽象的なイメージでラストテーマを入れてきますから、もはや辛抱たまらんの世界なのでした。
A-3 Milestones
猛烈なスピートで突入するテーマのカッコ良さに、ウォ~~! と反応する観客の雰囲気が最高♪ マイルス・デイビスは徹底的に突進する姿勢ですから、リズム隊も懸命です。
またジョージ・コールマンが流れて止まらないという恐ろしさで、リズム隊を圧倒していくのも凄いところです。
このあたりは、まだまだ発展途上だったトニー・ウイリアムスの未熟さといえばミもフタもありませんが、それでも強烈なアクセントとツッコミで反撃する場面が多々あって、熱くさせられます。
そしてハービー・ハンコックのアドリブパートも激烈というか、やはり当時のトップバンドだった新しい勢いが見事だと思います。
A-4 Joshua
当時のマイルス・デイビスにとっては新しい演目でしたから、緊張感が感じられるのは当然でしょうか。アドリブそのものは幾つかのキメのフレーズを中心にした単調なものですが、リズム隊のシャープな斬り込みを活かした組み立てになっているみたいですから、スリル満点です。
ジョージ・コールマンも演奏スピードの強弱を使って新しい世界を構築していきますが、ここでもリズム隊の動きは俊敏! 共謀して圧倒的な成果を上げています。
う~ん、はっきりとわかるテープ編集が……。
B-1 All Of You
またまたミュートを使ってマイルス・デイビスが安らぎを作り出していきますが、背後で蠢くリズム隊に耳が行くのも、また事実です。デリケートな表現が素晴らしいマイルス・デイビスに寄添うロン・カーター、些か無神経にビシバシとキメるトニー・ウイリアムス、その両者を取持つハービー・ハンコック♪
いゃ~、ジャズって本当に良いですねぇ~~~♪
B-2 Walkin'
オーラスは激烈モードのブルース大会なんですが、このメンツですから全力疾走は、お約束です。特にマイルス・デイビスは例によって一本調子のフレーズ展開が、ここでは良い方向に作用して、トニー・ウイリアムスの大暴れを誘います♪
しかしジョージ・コールマンが、些か苦しんでいます。まあ、この人の個性は、モヤモヤ展開の中にハッとするほど良い感じのフレーズを炸裂させるところですから、結果オーライなんですが……。
またハービー・ハンコックは可もなし、不可もなし……。というよりも録音の状態がイマイチなんで、キレの良いアドリブ展開が勿体無いなぁ~。
ちなみにこの演奏もテープ編集が施されています。
ということで、音源は元々、放送用に録られたものかと思います。所有盤はモノラル仕様なので、ステレオバージョンのミックスとかはご容赦願いたいのですが、テープ編集が施されているのがミエミエでした。
ところが近年、完全版がCDで出ているらしく、また演目が追加されたボックス物もあるというので、物欲に悩まされています。きっと音質も改善されているんだろうなぁ~。
まあ、それはそれとしてフランス国旗をイメージさせるジャケットデザインも素敵ですし、演奏の充実度というか、まだまだ発展途上にあったバンドの勢いが存分に楽しめる作品だと思います。