やっぱり雪国ですから、雪でした。風も強かったですねぇ。
当たり前の冬は、これで5年目! 早いもんです。
ということで、本日は――
■The Rumproller / Lee Morgan (Blue Note)
人気盤が多いリー・モーガンの作品中、一番人気じゃなかろうか……? と、私が思っているアルバムです。
というよりも、まあ、自分が一番好きなんですけどねぇ。
それは演目の良さ、演奏の素晴らしさに加えて、一緒に封じ込められた時代の勢いを感じてしまうからです。
録音は1965年4月21日ですから、大衆音楽の世界ではビートルズを筆頭にしたブリティッシュビートが全盛でしたし、またアメリカではモータウン系の黒人R&Bが大きなブームとなっていました。
言うまでもなく、ブリティッシュビートは黒人音楽の白人ポップス的な勘違い解釈であり、モータウン産のヒット曲は黒人音楽を白人にも聞き易くしたものですから、つまりは黒人音楽のゴッタ煮状態というのが、当時の実相だったのかもしれないと、私は思っています。
で、このアルバムは、ジャケットデザインからして、サイケポップな歪んだ文字が素敵です♪ そして中身はジャズロックやラテンロック、そして正統派ハードバップが幕の内弁当の様な楽しさ!
メンバーはリー・モーガン(Tp) 以下、ジョー・ヘンダーソン(ts)、ロニー・マシューズ(p)、ビクター・スプロールズ(b)、ビリー・ヒギンズ(ds) という実力者が揃いました――
A-1 The Rumproller
日活ニューアクションのサントラのようなカッコ良いテーマ! そこに絡んでグルーヴィなロニー・マシューズのピアノがゴキゲンです♪ もちろんビクター・スプローズのベースはグイノリですし、ビリー・ヒギンズが軽快に敲く擬似ドドンパのロックビートも、たまりません。ちなみに作曲のクレジットは、なんとアンドリュー・ヒル! これにも、たまげますねぇ~~。
肝心のアドリブパートは、まずリー・モーガンが薬籠中の展開を聞かせれば、ジョー・ヘンダーソンは幾分エキセントリックな音選びも交えての力演です。
さらにグッと惹きつけられるのが、リズム隊の痛快なグルーヴ♪ ファンキー主義でありながら、ジャズの真髄を追求したロニー・マシューズのピアノ、そしてビンビンブリブリなビクター・スプロールズのベースが最高です。
おまけに思わせぶりな最終パートが、これまた粋♪ なのでした。
A-2 Desert Moonlight / 月の砂漠
これこそが、このアルバムの人気の秘密!
なんと「月の砂漠」をハードバップ化しているんですねぇ~~~♪ ジャズ喫茶では、つい歌ってしまう酔客もいるほどの楽しさですが、もちろん店主はニコニコと黙認なのが、昭和の風景でした。
もちろんテーマ部分のアレンジも秀逸ですし、リー・モーガンの弾けまくったトランペットを支えるのが、快適なリズム隊のグルーヴです。ビリー・ヒギンズの、なかなか繊細なドラミングも素晴らしいと思います。
またジョー・ヘンダーソンのクネクネとうねったフレーズの積み重ねも、ここでは効果的ではないでしょうか。というのも、リズム隊が、どこまでもストレートに勝負していますからっ!
う~ん、それにしてもリー・モーガンは、どこからネタを仕込んだんでせうか……!?
B-1 Eclipso
これが楽しいラテンロックの名曲・名演です♪
なにしろリズム隊のノリが最高で、気難しいジョー・ヘンダーソンまでもが、楽しいフレーズ展開に追い込まれているほどです。
もちろんリー・モーガンは十八番の破天荒節を存分に炸裂させますら、ノー文句で楽しむのが王道かと思います。
B-2 Edda
一転して、ちょっと厳しいムードも漂うワルツビートのハードバップです。テーマが実にカッコイイ! ちなみに作曲はウェイン・ショーター!
ですから、ジョー・ヘンダーソンはストレートに気合が入っていますし、リー・モーガンは俺に任せろっ!
かなり複雑なキメを入れるリズム隊の纏まりも素晴らしく、かなりのスピートの中でバラバラをやっている瞬間も感じられますが、最後にはひとつに纏まっていくバンドの勢いは、モダンジャズ黄金期の輝きでしょうか。
B-3 The Lady
オーラスはリー・モーガンがミュートでシンミリと奏でるスローバラードの世界です。ジョー・ヘンダーソンが付けるハーモニーも絶妙ですねぇ♪ あぁ、この雰囲気の良さに酔ってしまうのが、ハードバップ王道の素直な愉しみじゃないでしょか。
リズム隊の繊細にして豪胆なバッキングも素晴らしく、特にロニー・マシューズの歌伴のようなピアノ、ビクター・スプロールズのブンブンベースが最高です。
ということで、最高に楽しいアルバムなんですが、最初の話に戻ってみると、これは黒人ジャズにしては軽くスマートな仕上がりだと思います。つまり聞き易いというのが、本当のところでしょう。
しかし如何にも黒人らしいグルーヴィなノリや弾けるビートは、やっぱり隠しようもありません。そして、こういうアルバムを聴いていると、当時の大衆音楽の充実度に満足してしまうのでした。