■Soul Experiences c/w In The Crowds / Iron Butterfly (Atco / 日本グラモフォン)
1960年代後半、ニューロックとかサイケデリックロックと称された歌と演奏を聞かせるバンドは、その特徴的なスタイルとしてエレクトリックな大音量と長尺なライプ演奏をウリにしていたわけですが、スタジオ録音から作られたレコードでそれを再現する事はなかなか難しい現実がありました。
ですから代表格のクリームにしても、スタジオとライプのレコーディングを組み合わせたアルバムを出していましたし、ライプでの魅力を発揮出来ずにブレイクしなかったバンドも数知れないと思います。
ところが本日ご紹介のアイアン・バタフライは、それを逆手に活かしたというか、持ち前のヘヴィなサウンドでLP片面をブッ通した「In-A-Gadda-Da-Vida」という、如何にも時代性の強いトラックを作り出し、ロック史に名を刻したわけですが……。
今となっては、そのトンデモ系の呪文演奏が良くも悪くも凄すぎて、他の曲が全く忘れられているのは残念としか言いようがありません。
実は前述の「In-A-Gadda-Da-Vida」は、確かに1968年に発売された同名アルバムに収録された時には「17分」という伝説を作り出したのですが、一応はヒットしたシングルバージョンは短く編集されていましたし、バンドとしては相当にポップなフィーリングを持っていたと、サイケおやじは思っています。
例えば本日ご紹介のシングル盤に収録の2曲は、1969年に発売されたアイアン・バタフライにとっては3作目のアルバム「ボール」からのカットなんですが、まずA面の「Soul Experiences」がタイトルに偽り無し! かなりヘヴィなリズムアプローチと後のフィリーソウルっぽいソフトなコード進行に基づくメロディラインが魅惑の名演♪♪~♪
またB面に収められた「In The Crowds」にしても、欧州クラシック趣味に彩られたソフトロックっぽい隠れ名曲で、絶妙の哀愁がたまりませんよ♪♪~♪
そして何よりも素晴らしいのが、何度も書いていますが、ヘヴィなサウンド作りで、その要とも言うぺきはエレクトリックベースの目立ちまくる存在でしょう。またドラムスも同様に重心の低いビートの敲き方が最高ですねぇ~♪
ちなみに当時のメンバーはエリック・ブラン(g)、ダグ・イングル(key,vo)、リー・ドーマン(b)、ロン・ブッシー(ds) という4人組で、1967年のデビュー以来、少しずつ顔ぶれは変わって来ているらしいのですが、音楽性としてはダグ・イングルが曲作りやサウンドプロデュースをメインでやっているようです。
そこで気になるヘヴィな音づくりのポイントは、どうやらチューニングを意図的に低くしたベースにある事が、今日では明らかになっています。
そして秘密を知ってしまえば、アイアン・バタフライのレコードは尚更に興味深く、楽しく聴ける作品ばかりですから、サイケおやじは周囲から笑われつつも、ファンを自認している次第です。
ただしアイアン・バタフライは1970年頃からメンバーチェンジが頻繁になり、一応はバンマスのダグ・イングルが奮闘し続けて今日に至っているものの、このシングル曲を含むあたりまでが全盛期でしょう。
しかしサイケおやじにとっては、今でも一度はライプを見たいバンドのひとつになっていますし、例え「呪文」と言われても、それはありがたく拝聴しております。
また、ひとりでも多くの皆様にアイアン・バタフライのポップでヘヴィでソウルフルな持ち味を楽しんでいただきたく、願っているのでした。