■朝日のない街 c/w I Can't Believe It / The Animals (EMI / 東芝)
対立の構図を好んで報道する最近のマスコミにしても、同じ穴のなんとやらという読売ジャイアンツの内紛を大袈裟に騒ぐのは、どうなんですかねぇ……。
ここでサイケおやじが、あえて「読売」と書いたのは、ジャイアンツというプロ野球チームのゴタゴタではないという意味でのことです。
つまり、同じグループ内の人事や経営を権力闘争の具に使っているような感じがするんですが、それは如何なもんでしょう。
もちろん当事者達には、それぞれのバックがあっての行動発言でしょうから、決して短慮では無いはずというあたりが、尚更にスッキリしません。
もう、ど~せ、ここまでやっちまったのなら、ジャイアンツファンのためにも分かり易く決着させる義務が読売グループにはあるでしょうし、マスコミ仲間も揚げ足取りは止めるべきだと思うのですが……。
さて、そこで思い出されるのが本日ご紹介するアニマルズのシングル盤で、結論から言えば、これは所謂「新生」という新しき旅立ちの記録です。
というのも、ご存じのとおり、アニマルズのリーダーであり、音楽面の中心でもあったアラン・プライスがバンド内の諸問題から追い出される形で脱退した後の再出発は如何に!? その答えを明確に打ち出す事こそが、1965年夏のアニマルズには求められていたと思われるんですねぇ。
まさに人気バンドの宿命っていうやつでしょう。
そしてアラン・プライスに代わって入ったデイヴ・ロウベリーの実力はっ!?
そんなこんなが見事に結実した名演が、このシングル盤両面できっちりと楽しめるというわけです。
それはまずA面の「朝日のない街 / We've Gotta Get Out Of This Place」からして見事な成功という他は無く、強烈にグルーヴしまくったベースが凄いイントロから、自然体でエグ味を強調していくエリック・バートンのボーカルは真っ黒!
実はこの曲、アメリカのヒットメーカーとして歴史に名を刻すバリー・マン&シンシア・ワイルが本来はライチャス・ブラザース用に書いたと言われるだけあって、完全にブルーアイドソウルの御用達なんですが、それにしてもアニマルズの解釈による歌と演奏は本気度が高過ぎますっ!
タテノリ中心主義のドラムス&ギターに絡んでいくキーボードは、もちろん新参のデイヴ・ロウベリーで、そのソウルフルな味わいはアラン・プライスのジャズっぽさとは別のベクトルでバンドを熱くリードしていると思います。
ちなみにアメリカやフランスでは別テイクも流通していて、ボーカルの勿体ぶったところは個人的に大減点なんですが、オルガンがさらに全面に出た演奏パートはなかなか琴線に触れまくりという困り物ですから、要注意ですよ。
そうしたソウルフルな感覚はB面収録の「I Can't Believe It」でますます強くなり、どうやらエリック・バートンのオリジナルという説もありますが、その実態はソロモン・パークあたりが歌ってくれそうなディープな黒人R&Bのブルースロック的な解釈とでも申しましょうか、聴くほどにサイケおやじはシビれが止まりません♪♪~♪
なによりも粘っこい歌と演奏の一体感は当時の世界最高水準として、ストーンズ以上と言いきって後悔しないものがありますし、サウンドの要はソウルフル一本独鈷なデイヴ・ロウベリーのオルガンでしょう。特に山場でのエリック・バートンのボーカルとユニゾンでキメるパートは、何度聴いてもゾクゾクする他はありません!
ですから「朝日のない街 / We've Gotta Get Out Of This Place」は欧米でも期待どおりに大ヒットしていますし、我国でも昭和40(1965)年晩秋から年末年始にかけて、ラジオから流れまくっていましたですねぇ~♪
またB面の「I Can't Believe It」も、独立後のエリック・バートンがライプの重要演目にしていた事に加え、再結成&分裂アニマルズが演じたブートテープも残されていますから、これはバンドメンバー全員にとっても納得の仕上がりだったんじゃないでしょうか。
ということで、内部のゴタゴタが表沙汰になっても、その後に結果を出してしまえば全てが帳消しになり、むしろ所謂「雨降って地固まる」という事です。
ご存じのとおり、アニマルズはこのシングル盤を出した直後、売り出してくれたプロデューサーのミッキー・モストと別れ、レコード会社も移籍するわけですが、そうした流れの中でグループはエリック・バートン主導によるサイケデリックロックへの接近と迷走、それゆえのメンバーチェンジ等々を繰り返し、解散しています。
ところが残された楽曲と「アニマルズというバンド名」は絶対に消滅せず、むしろ時が経つほどに評価が高くなっている感さえあるんですねぇ。
ですから現実的には3~4組のアニマルズが同時並行的に存在していた頃もありましたし、離散集合の過程で内部のゴタゴタがミエミエになっていたとしても、周囲はそれを許していたように思います。
そこで現在の読売ジャイアンツを鑑みれば、既に「過去の栄光」に縋っている時では無く、「新しい出発」を目指すべき段階での主導権争いが見苦しいですよ……。
また、それを他のマスコミに面白がられているようでは、尚更にファンはせつないでしょうねぇ……。
まあ、幸いにしてサイケおやじはジャイアンツはど~でもいい立場なんで、そんな戯言も書けるんでしょうが、アニマルズに関しては、一生ついていく覚悟がありますので、そのあたりをご理解願いたく、暴言ご容赦下さい。
結局、世の中は結果が全てという真実も大切なんでしょうねぇ。