■朝日のあたる家 / Geordie (EMI / 東芝)
この世の真実のひとつである、二番煎じの魅力は言うまでもありませんが、本日ご紹介のジョーディというバンドは、その路線を極めた事が人気の秘密だったように思います。
メンバーはブライアン・ジョンソン(vo)、ヴィック・マルコム(g)、トム・ヒル(b)、ブライアン・ギブソン(ds) という4人組で、イギリスはニューキャッスルの出身ということは、同郷の大先輩として世界中にその名を轟かせたアニマルズの影響下にある、ど根性のロック魂が基本的な持ち味だと思います。
ところがジョーディがいよいよメジャーデビューの1972年春は、ロンドンを震源地とするグラムロックのブームが真っ盛りとあって、T.レックスやデヴィッド・ボウイ等々に代表される「化粧」ミュージシャンが主流でしたから、本来が泥臭い音楽性と野暮天ルックスがジャストミートの魅力になっていた彼等にしても、当時はミョウチキリンなメイクを施されていたのですから、いやはやなんとも……。
実際、サイケおやじはリアルタイムの洋楽雑誌に掲載されていたジョーディの化粧スチールに思わず失笑しましたし、日本での最初のヒットシングル「君にすべてを / All Because Of You」のピクチャースリーヴも、また然りだったんですねぇ。
まあ、このあたりはブームに乗っかる勢いの大切さという業界の掟かもしれませんが、実際にジョーディの音を聴いてみれば、とてもグラム&グリッターロックの範疇に収まる連中ではありません。
むしろスレイドに近い、パワーポップなハードロックがウリであり、さらに共通するのがバカノリ系の騒乱バンドだったように思います。
しかし一方、残されたアルバムを聴き込むにつれ、カントリー風味のホワイトソウルやR&Bのブリティッシュロック的解釈、またブルースロックのお子様ランチ等々、なかなかウケ狙いが憎めない音楽性は、逆に侮れません。
そしてなんと言っても激しい印象を残すのが、ブライアン・ジョンソンの突き抜けたハイトーンのシャウトが垂直落下式のブレーンバスター如くリスナーを圧倒するという、バンド固有の必殺技があるのは絶対の強みでしょう。
さて、そうした中で1974年に発売されたのが本日掲載したシングル曲「朝日のあたる家 / The House Of The Rising Sun」で、これはご存じ! アニマルズ畢生の歴史的大ヒットのリバイバル狙いなんですが、今日まで数多残された同曲のカバーバージョンの中にあっては、如何にも疑似なプログレ風味とワザとらしいグリッター系の音作りがイナタイ!
このあたりはアマチュアバンドでもコピーしようが無いほどの個性であって、はっきり言えば、イモ寸前の仕上がりだと思います。しかし前述したブライアン・ジョンソンの空騒ぎっぽいボーカルがある限り、これは名演名唱という逆説も成り立つんですから、ヤバイですねぇ~♪
また本家アニマルズと同郷の強みというか、ジョーディのバージョンには、何か免罪符を得たかのような開き直りがあるようにも感じます。
そしてジャケ写からも一目瞭然、ジョーディの面々のルックスのダサダサな雰囲気は、もちろんバンド名がイギリスのニューキャッスル地域特有の方言を意味するところから、あえて田舎者をドロドロに演じようした意図があるんでしょうか? ちょうど似たようなウリを展開していたスレイドが低能やウスノロをやっていたように、自らバカをやりながら観客やファンを熱狂させる、ある意味ではイロモノ系のグループだったのかもしれません。
しかし、決してキワモノでは無い!
サイケおやじは、そう確信しています。
何故ならば、皆様ご存じのとおり、ブライアン・ジョンソンは音のデカさは世界一と言われるハードロックの人気バンドとなっていたAC/DCに、一座のスターだったボン・スコットの後任として加入し、見事に成功を継続させ、実質的に世界最高峰のバンドに導く働きをしたのですから!
またジョーディとしての活動でも、バンドの面々はそれぞれに堅実な実力派でした。
今日ではAC/DC云々でしか語られなくなったジョーディではありますが、1972年からの3年間ほどに聞かせてくれた歌と演奏は永遠のハードロックであり、今でも忘れられないというリアルタイムからのファンにとっては、懐かしさ以上の存在になっているはずです。
もちろん、その根源的魅力は冒頭に述べたとおり、二番煎じならではの分かっている楽しみをガブ飲み出来るところにあると思いますので、一緒に楽しんでいただければ幸いでございます。