■出ておいでよ、お嬢さん c/w Smile Away / Paul & Lind McCartney (Apple / 東芝)
さてさて、今日は一昨日の続きとなりますが、こうしてポールが無事(?)に新作アルバム「ラム」を世に出したのは、欧米では1971年5月、日本ではちょいと遅れて6月25日でした。
しかし現代のようにネットが無かった時代です。
宣伝だってラジオの洋楽番組や深夜放送がリアルタイムでは一番効果が大きかった事わけですが、この「ラム」からは特にシングルカットされた曲が当初は無かったことから、話題にはなっていましたが、さりとて内容云々が積極的にプッシュされていた記憶は薄いところです。
ただし国営FMラジオ放送では、その頃の慣例(?)として、LP全部を丸ごと流すという太っ腹な企画があり、この「ラム」も対象作品に選ばれたのでしょうか、友人がエアチェックしたテープをサイケおやじに貸してくれたのですが、恥ずかしながら、最初に聴いた時の???のミョウチキリンな気分は、なにか非常な違和感になっています。
実は皆様もご存じのとおり、当時は世界的にシンガーソングライターの大ブーム期であり、それはフォークやカントリー&ウェスタンに根ざした音楽性を基礎とする趣でしたから、必然的に音作りはアコースティックギターやピアノがメインという、ある意味では「反ロック」的な印象をウリにしていた側面があります。
と同時に、そこに彩られているのは、ソウルやジャズ、さらにはラテンミュージック等々の民族音楽風味であり、そのあたりのセンスの良し悪しが、特に外国語の歌詞をダイレクトに解しない日本の洋楽ファンにとっては心の拠り所(?)だったわけです。
そして一方、説明不要とは思いますが、当時の洋楽の主流はやっぱりハードロックやプログレを核とする所謂ブリティッシュロックであり、その対抗勢力としてのアメリカンハード、あるいは台頭してきたグラムロックやニューソウル、おまけに根強い人気のバブルガム系3分間ポップスが文字どおり、百花繚乱の全盛期!
ちなみに当時、評判を呼んでいたヒットアルバムとしては、ゼップの「Ⅲ」、ストーンズの「ゲット・ヤー」、ピンク・フロイドの「原子心母」、ボブ・ディランの「新しい夜明け」、GFRの2枚組「ライプ」、ニール・ヤングの「アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ」、エルトン・ジョンの「2nd」&「3rd」、シカゴの「Ⅲ」、ポコの「ライプ」、クリムゾン一派の「マクドナルド&ジャイルス」、キャロル・キングの「つづれおり」、ジェームス・テイラーの「マッド・スライド・スリム」、さらにはストーンズ驚異の傑作「スティッキー・フィンガーズ」等々、まさに歴史を作った名盤LPが毎月の様に発売され、実際、サイケおやじにしても、聴きたいレコードがどっさりあるのに、個人的には経済状況が追いつかないという苦しさが……。
ですから、前述したとおり、そんな中に出て、違和感が払拭出来ない「ラム」を粗略にしたバチアタリも無理からん、とご理解願いたいところなのです。
また些か結果論になりますが、「ラム」には前記したヒットアルバム群にあるような派手さ、鋭さ、エグ味が無く、それは元ビートルズのジョンの「ジョンの魂」やジョージの「金字塔」と比較しても、明らかにロック性感度の低さが感じられると思います。
ところが、ロックではなくポップスという観点から「ラム」を聴いてみると、これは圧倒的な存在感や輝きに満ちていることは言うまでもありません。
恥ずからしながら、その事に気がつかせていただいたのが、本日掲載のシングル盤で、これまた説明不要、その「ラム」から我国独自でカットし、昭和46(1971)年9月に発売となった1枚です。
まず、なんといってもA面の「出ておいでよ、お嬢さん / Eat At Home」が、まさにマッカートニー節全開のシンプルなR&Rで、微妙なスカビートや浮遊感が滲むキメのコーラスワークは言わずもがな、このあたりで杉真理の元ネタをあれこれ詮索するのも自由ではありますが、なによりもサイケおやじをシビれさせたのは、同時代の流行であったカントリーロックやニューソウルの味わいを見事にビートルズ色で纏め上げ、それも簡素極まりないバンドサウンドでやっているというところでした。
もちろん、アルバム「ラム」の中には、これ以上に凄い完成度を聞かせる名曲名演がある事は確かです。
しかし「出ておいでよ、お嬢さん / Eat At Home」の親しみ易くて、さらに奥が深い仕上がりは、「ロック」というよりも、「ポップス」という、ある意味では作り物の音楽の真髄に、極めて簡素に迫っている感じが♪♪~♪
尤も、そんな理屈は完全な後付けにすぎませんが、それでもリアルタイムでこの「出ておいでよ、お嬢さん / Eat At Home」がラジオから流れた瞬間、実はサイケおやじはエロ本見ながら、自己満足的作業に勤しんでいた手を止めてしまった体験があるほどで、思わず、しまった!! と独り納得する他はありませんでしたねぇ~~~~。
そこで早速、翌日には掲載のシングル盤をゲットしたというわけですが、もちろんLPの「ラム」が買えないという事情があった事は蛇足でしょう。
しかし、ここでB面収録の「Smile Away」を聴いて、再び仰天!
結果的に後のウィングスに繋がる如何にもポールっぽいハードロックであり、また既にして全盛期マーク・ボラン&Tレックスをやっている事は別にしても、これは「レノン&マッカートニー」として「ビートルズ」で演じる事も視野に入れての創作と思えないこともありません。
それほどファンの心をくすぐってくれる「未練の名曲」と、サイケおやじは楽しんでしまったんですねぇ~♪
ということで、とにもかくにも「出ておいでよ、お嬢さん / Eat At Home」の思わず一緒に歌いたくなるフィーリングに共鳴させられたサイケおやじは、エレキギターでこれを独りで歌うというジコチュウ&ジコマンのコピーをやってしまったほどです。
いゃ~、これは正直、エレキじゃなければ、楽しくないっ!
心底、すっかり「その気」にさせられてしまうほどの傑作ポップ曲であり、それゆえにロックでもあるという、些か確信犯的な告白に至りますが、それはそれとして、ここまでくれば、後はアルバム「ラム」に向かって一直線でしょう。
この話は、もう少し続けます。