■Run Run Run / Jo Jo Gunne (Asylum / 東芝)
1970年代後半から末頃にかけて、所謂サーファー御用達のロックシンガーだったのがジェイ・ファーガソンという西海岸野郎でした。
その音楽性は一口に言って「お気楽」ってところでしょうかねぇ~。
と書いてしまえば、完全にお叱りは覚悟しなければなりませんが、それでも人気があった1982年頃までには5枚ほどのLPを出し、それなりに売っていましたし、来日公演も二度ほどはあったのですから、侮れない存在なのでしょう。
しかしロックの魂には、ある意味での悲壮感が必要と思い込んでいるイノセントな洋楽ファンにすれば、確かに物足りないのがジェイ・ファーガソンであって、その所為か、1980年代の中古市場には、この人のリーダーアルバムがゴロゴロしていた記憶が鮮明です。
ところがジェイ・ファーガソンは最初っから決して「お気楽」なミュージシャンではなく、最初に注目を集めた自己のバンドは1967年にデビューしたスピリットと名乗るウエストコーストのプログレグループであり、今となっては煮え切らない音楽性が逆に面白い!?
なぁ~んて評価されるマニアックな趣味人なんですから、ジェイ・ファーガソンに先入観念は禁物かもしれません。
そしてスピリットが後年になって再評価というか、局地的な人気を獲得するのはジェイ・ファーガソン云々ではなく、デビューさせた仕掛人が西海岸ハリウッドポップスの大物プロデューサーだったルー・アドラーという事実、そしてメンバーのひとりにランディ・カルフォルニアという異色のロックギタリストが在籍していたからというのが定説です。
まあ、このあたりについては何れ項を別にして書きたいと思いますが、結果的にスピリットが商業的に失敗したのは、様々な音楽的要素を詰め込み過ぎて、スカッとしたロック的快感を発揮出来なかったからでしょう。1970年までに3~4枚のLPも出していますが、如何にも実験の臭いがキツイ作品ばかり……。
ですからジェイ・ファーガソンが一念発起(?)、スピリットを抜けて明快な娯楽優先主義のロックに走った事にも充分な理由づけが可能であり、そうやって結成されたバンドが、本日ご紹介のシングル曲「Run Run Run」をデビューヒットさせたジョ・ジョ・ガンでした。
メンバーはジェイ・ファーガソン(vo,key)、マット・アンデス(g,vo)、マーク・アンデス(b,vo)、カーリー・スミス(ds) の4人組で、とにかくバブルガム寸前のノリが良い演奏と分かり易い曲調がウリでしたねぇ~♪
それはこの「Run Run Run」がハードロックでありながら、如何にもアメリカ西海岸的なコーラス、サザンロックをスマートにしたようなギターソロやキメのリフ等々、短いながらもビシッとキマッた歌と演奏は圧巻の仕上がりですよ♪♪~♪
ところが、あまりにも「Run Run Run」が出来過ぎていたという事でしょう。結果的に「一発屋」のレッテルを貼られ、しかも2年ほどで解散する間には驚くなかれ。4枚も作ったアルバムの中身が、ほとんどワンパターンのお気楽節ばっかりなんですよねぇ……。
極言すれば、「Run Run Run」以外は全て埋め合わせ的なヘタレのロックとしか、サイケおやじには思えません。
つまり、それほど「Run Run Run」は最高なんですよっ!
ここからは完全なる妄想の世界になりますが、ジョ・ジョ・ガンが4枚もLPをレコーディング出来たのは、レコード会社側に「Run Run Run」の夢よ、もう一度、という切なる願いがあったからでしょう。
ということで、本日はジェイ・ファーガソンについて、必要以上に厳しい事を書いてしまいましたが、それもこれもジョ・ジョ・ガンが演じる「Run Run Run」という、実に素敵な西海岸ハードロックをご紹介したい一心によるものです。
ちなみに曲作りもプロデュースもジョ・ジョ・ガン本人達がやってのけた事実も大切であり、これが如何にも1972年というカリフォルニア中華思想の揺籃期を物語る名唱名演という括りも可能かと思うのでした。