■Bad Walking Woman / Leon Spencer (Prestige)
今となっては、その全盛期に、全く我が国のジャズマスコミやジャズ喫茶から締め出されていたプレイヤーが少なくなかった現実の中で、本日ご紹介のLPを1972年に出したレオン・スペンサーも、そ~したオルガン奏者のひとりでありました。
もちろん、やっていたのはソウルジャズそのものでしたから、コルトレーンが神様になっていた当時の日本のジャズ喫茶じゃ~、無視されて当然の音楽性とはいえ、ちょうどその頃からジワジワと勢力を拡大していたロックジャズや未だクロスオーバーと呼ばれていたフュージョンが侮れない流行となれば、そこで注目を集めていたミュージシャンが参加しているレコードが漁られるのは自然の理、まさに未知との遭遇が求められていたように思います。
で、このLPにおけるサイケおやじのそのポイントからのお目当てはヒューバート・ロウズ(fl) やジョー・ベック(g)、ソニー・フォーチュン(as) という、ちょうどその頃にクロスオーバーを牽引していたレーベルだったCTIの諸作やマイルス・デイビスのバンドで一躍注目され始めた面々でしたので、肝心の主役であるレオン・スペンサー(org) 以下、ヴァージル・ジョーンズ(tp)、バズ・ブラウナー(fl) 、デイブ・ハバード(ts)、メルヴィン・スパークス(g)、アイドリス・ムハマッド(ds)、バディ・コールドウェル(per) 等々の参加している他のメンバーについては知っている人もいれば、名前ぐらいしか……、という感じで、まあ、正直に言わせていただければ、関心は無いに等しかったんですよ。
ところがそんな気分で針を落としてみたら、これがいきなり自分の感性にジャストミート ♪♪~♪
ソウルもロックもブルースもジャズもゴスペルもラテンもゴッタ煮の美味しい闇鍋なんですねぇ~~ ♪
しかも収録全曲がレオン・スペンサーのオリジナルとクレジットされていながら、どっが聞いたことがあるよなぁ~~、これって! というニンマリ感もたまりません。
A-1 Hip Shaker
ミディアムテンポのシャッフル系ソウルジャズで、デイブ・ハバードの正統派タフテナーやレオン・スペンサーのハードバップがモロ出しのオルガンが、それこそたっぷりのブルースフィーリングを提供してくれますが、メルヴィン・スパークスとアイドリス・ムハマッドが打ち出してくるタテノリファンキー(?)なリズム&ビートが快適過ぎて、クセになりそうな演奏です。
A-2 Down On Dowling Street
初っ端からブルース&ソウルなオルガンが導く、これまたミディアムスローのブルースインストでありながら、メルヴィン・スパークスのギターソロはジョージ・ベンソンがグラント・グリーンをやっているような似非モダンな感覚があり、同時にペンタトニック多様気味ところはブルースロック!? しかし続くレオン・スペンサーのオルガンのアドリブは本人が喚きちらして歌うが如きシャウト入りですから、その対比の真っ黒さがニクイばかりです。
A-3 In Search Of Love
一転して、今度はストリングスオーケストラが入ったラウンジ系のソフトなボサロックと申しましょうか、アレンジはビリー・ヴァー・ブランクとクレジットされていますが、どことなくイナタイ雰囲気の中、ここでいよいよフルートのアドリブソロが聴かれますが、これをヒューバート・ロウズと思いたいサイケおやじの思惑とは離れたところで、バズ・ブラウナーのクレジットが一緒にあるのは気になるところです。
また、ここでのボサノバっぽいリズムギターはジョー・ベックなんですが、レオン・スペンサーのオルガンも含めて、これをソウルジャズと括るのは、まあ、ど~でもいいか ♪
気持ちイイ~ですからねぇ~~ ♪
A-4 If You Were Me And I Were You
これまた最初っからストリングスやフルートが絡んでくる軽妙洒脱なモダンジャズなんですから、前半の黒っぽさは何処行ったぁ~~~!?
それでもグビグビと淀みなく弾き続けるレオン・スペンサーのオルガンプレイには迷いが無いようで、中盤以降は相当にアグレッシブなフレーズ展開をやってくれるのは、それも新しい感覚の追求なんでしょうかねぇ~~!?
本当に摩訶不思議な気分にさせられてしまいます。
B-1 Bad Walking Woman
まさにアルバムタイトル曲だけあってホーン&ブラスセクションも入ったファンキー&グルーヴィンな演奏で、メルヴィン・スパークスのリズムギターも心地良く、レオン・スペンサーのオルガンも王道路線 ♪♪~♪
もっと長くやって欲しかったですよ。
B-2 When My Love Has Gone
なんだか知っていたような曲タイトルではありますが、粋なストリングスとメロウムードが滲み出るオルガンの存在感が胸キュン系のメロディを紡いでくれるのは高得点 ♪
コンガが絶妙なアクセントのリズム隊、またモード風味のアドリブに踏み込んだりするレオン・スペンサーのフュージョン感覚が意外にイケている気がします。
B-3 When Dreams Start To Fade
これまたソフト&メロウな演奏でジョー・ベックのアコースティックギターによるリズムカッティング、膨らみのあるストリングスのアレンジ、そしてメロディ優先主義のオルガンに専心するレオン・スペンサーがニクイばかりではありますが、おそらくはヒューバート・ロウズと思われるフルートが手の込んだアドリブを披露しているあたりはジャズ者も納得するしかありません。
これまたソフト&メロウな演奏でジョー・ベックのアコースティックギターによるリズムカッティング、膨らみのあるストリングスのアレンジ、そしてメロディ優先主義のオルガンに専心するレオン・スペンサーがニクイばかりではありますが、おそらくはヒューバート・ロウズと思われるフルートが手の込んだアドリブを披露しているあたりはジャズ者も納得するしかありません。
だからだでしょうか、後半ではレオン・スペンサーもプログレのオルガンみたいな世界に入る瞬間までも聞かせてくれるのは、果たしてこれがソウルジャズ?
ということで、これはプレフュージョン的な演奏が目立つ内容かもしれません。
しかし、サイケおやじにはレオン・スペンサーの演奏からソウルジャズの土台が確かに感じられますし、それが決して新しくないのに、前を向いているムードがジワッと伝わってくるんですが、いかがなものでしょう。
この当時残されたレコーディングはプレスティッジに幾つかあるんですが、個人的には「CTI~ Kude」レーベルに吹き込んでいたら、相当に面白いアルバムが作られたように思います。
ちなみに後に知ったことではありますが、レオン・スペンサーはルー・ドナルドソン(as) のバンドに入って、この売れっ子リーダーのブルーノート諸作にレコーディングを残していますが、そこでもグルになって盛り上げていたドラマーのアイドリス・ムハマッドが、このアルバムでも強い印象!
うむ、演目によってはラウンジ系BGMにもなりかねないトラックから、それでもジャズソウル味が失せないのは、そんな盟友関係(?)があるんでしょうかねぇ~~。
ということで、レオン・スペンサーも日本じゃ~あまり知られることのなかったオルガン奏者だったんですが、近年は隠れ人気があるらしく、CD復刻されたアルバムも幾つかあるようです。
最後になりましたが、掲載したLPのジャケ写は小さくて判別も難しいとは思いますが、これが実物大となれば、そこにはびっしりと「イイ尻」がねぇ~~♪
CDが出ていたとしても、こ~ゆ~愉しみがありますから、アナログ盤LPの良さは不滅と思うばかりです。