OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

コミックバンド・アゲイン

2019-09-29 19:26:13 | 歌謡曲
宮本武蔵 / ドンキーカルテット (RCA / 日本ビクター)

近年はすっかり絶滅の感もあるコミックバンドも、昭和30 ~ 40年代はテレビのお笑い寄席番組が多数放送されていた事もあり、まさに全盛期だったように思います。

それはクレイジー・キャッツを頂点にドリフターズ、玉川カルテット、東京ボーイズ、殿様キングス、横山ホットブラザーズ、フラワーショウ等々と東西多士済々の中にあって、本日掲載のシングル盤A面曲「宮本武蔵」を大ヒットさせたドンキーカルテットは決して忘れられないグループでしょう。

説明不要とは思いますが、我が国のコミックバンドには大まかな分類でジャズ~ロカビリー系と浪曲漫才系があって、前者はクレイジーキャッツやドリフターズ、後者は玉川カルテットやフラワーショウが分かり易いところだと思います。

で、ドンキーカルテットは、どちらかと云えば前者に分類されるんですが、音楽ネタの中には洋楽も浪曲も講談もクラシックもゴッタ煮の笑いがあり、当然ながらコントネタにも音楽的な要素が強く混入されていた事は、実際に彼等の演芸をご覧になった皆様であれぱ思い出されるんじゃ~ないでしょうか。

メンバーは小野ヤスシ(g,vo)、ジャイアント吉田(vo,b)、猪熊虎五郎(key,vo,etc)、祝勝(ds.b,vo) が全盛期の顔ぶれで、昭和45(1975)年に出した掲載盤も、この4人が在籍中のレコーディングです。

良く知られているように、ドンキーカルテットはカントリー&ロカビリーバンド時代のドリフターズから分裂して結成されたバンドであり、それが昭和40(1965)年頃だったそうですが、それゆえに最初っからコミックバンドを目指したのがドンキーカルテットの本質だとしたら、お笑い演芸が大人気だった当時の芸能界の趨勢を見据えた動きだったのでしょう。

そして当然ながら、その頃はお笑い芸人もレコードを出すのが当たり前の時代で、クレイジーキャッツは既に大ヒットを何曲も放っていた大スタアでしたから、後に続けとばかりに世に出たシングル盤は数あれど、なかなか本格的にヒットしたのはドリフターズが昭和42(1967)年に発売した「いい湯だな」ぐらいだったと思いますが、それとてドリフターズがメインでやっていた様々なテレビバラエティの中で歌っての成果であり、以降「ミヨちゃん」「ズンドコ節」等々のカバー曲の替え歌&別アレンジ路線でヒットを重ねていったのは皆様ご存知のとおりです。

しかし、ドリフターズはそれゆえに自分達で演奏し、歌う事が極力少なくなり、コントグループになってしまった後も、ドンキーカルテットはバンド演奏をやりながらのコミックショウをライブの現場で押し通し、テレビ出演時であっても、カラオケよりは自前の演奏を見せていたのは特筆物!

実際、サイケおやじはリアルタイムで彼等の演奏や歌のライブステージに接して、ミュージシャンとしてのドンキーカルテットの上手さに背筋が伸びる思いをした事が何度もありましたですよ。

で、この「宮本武蔵」は、あの有名な剣豪の物語をドンキーカルテットの流儀で聞かせた名演で、曲調はモロにアップテンポのカントリー&ロカビリー、メロディラインもそのジャンルでは黄金律という、つまりはどっかで聞いた事のあるよなぁ~~♪ っていう調子の良さは最高で、しかも歌詞の中身はコミックソングですから、これが深夜放送をメインにヒットするのはムベるかな、パチンコ屋や商店街、飲み屋の有線でも流行りまくっていましたですねぇ~~♪
 
ちなみに作詞&作編曲はメンバーのジャイアント吉田であり、リードボーカルも担当していましたから、このあたりからもドンキーカルテットの音楽的素養の深さ&高さは伝わってくるんじゃ~ないでしょうか。実際、テレビでもしっかり歌っていましたからねぇ~~♪

ただし、残念ながら、ドンキーカルテットの目立ったヒットは、これだけ……。時代は少しずつコントグループを必要としていたようで、またコミックバンドも例えば殿様キングスのように本格的な歌謡曲のレコードを出してメガヒットを放つ等々、コミックバンドそのものの存在意義も薄れていったのは寂しい出来事と思うばかりです。

ということで、ドンキーカルテットに限らず、往年のコミックバンドの映像は夥しく残されていると思えば、デジタル化による纏まった映像集が出る事を強く願っています。

また、蛇足ではありますが、最近の歌謡界には喋りが特段に面白い歌手が多く、例えば福田こうへい、三山ひろし、大江裕、徳永ゆうき等々、歌が上手くて、トークも最高、さらに独独の「フラ」がある面々が続々と登場しているのですから、ここらで本格的なコミックバンドが出現しても良いのでは?

そんなふうに思っているのでした。
コメント
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