■Soul Discovery / Jackie Ivory (Atlantic)
A-1 High Heel Sneakers
A-2 Freddy The Freeloader
A-3 So What
A-4 I Left My Heart In San Francisco
A-5 The Monkey Woman
B-1 Lonely Avenue
B-2 Do It To Death
B-3 Sister Sadie
B-4 Thank Heaven
本日の掲載盤もジャッキー・アイヴォリー、あるいはジャッキー・アイボリーかもしれませんが、これまでほとんど無名に近いと思われるオルガン奏者のソウルジャズ♪♪~♪
しかし告白すると、サイケおやじはそんなこたぁ~~全然知らず、実はジャケットの雰囲気と発売レコード会社「アトランティック」のイメージから、これはてっきりアメリカは南部系ディープソウルな黒人歌手のアルバムかと思い込み、さらに売っていたのがイギリスの中古レコード店の安売コーナーだったもんですから、裏ジャケの曲目さえもロクに確認せず、他に釣り上げたブツと十把一絡げ的にゲットしてきた1枚でありました。
ですから、実際に針を落として、これがオルガンとテナーサックがメインのインストによるソウルジャズだった事に気づかされた時、初めて主役のジャッキー・アイヴォリーがオルガン奏者であったと知ったわけですし、もちろんサイケおやじにはそのあたりについての何の知識もありません。
ただ、このLPが世に出た1965年は、当地イギリスがビートルズやストーンズ等々の所謂ブリティッシュビートの大ブームに沸いていた頃であり、そんな中のモッズ族と呼ばれるファン層にはオルガンを使ったロックやソウルが好まれていたそうですから、アメリカ産のオルガンジャズ~ソウルジャズのレコードもイギリス盤が発売されていたのは需要の高まりだったのかもしれません。
もちろん掲載の私有盤もイギリスプレスなんですよ。
で、気になる演奏メンバーはジャッキー・アイヴォリー(org)、ポール・レンフロー(ts)、ビル・ニックス(ds) という、日本の常識では無名のトリオ編成で、えっ!? ギターもパーカッションも入っていないのっ!?
という不安の先入観は確かにございますが、どっこいっ! これがこのトリオだからこその遠慮会釈の無い真っ濃い演奏!
まずはド頭「High Heel Sneakers」は当時ストーンズも十八番にしていた本場アメリカのR&Bヒットですから、快適なテンポで演じられるブルース&ソウルはお約束とはいえ、ジャッキー・アイヴォリーのオルガンからは強靭なベースのグルーヴとモリモリと放出されるソウルフィーリングがテンコ盛り♪♪~♪ またポール・レンフローのテナーサックスもシンプルながらガッツ溢れる音色には大いに気を惹かれること請け合いですよ。
ですから、アッと驚くというか、マイルス・デイビスのモードジャズが完成されたとする名盤アルバム「カインド・オブ・ブルー」からの「Freddy The Freeloader」と「So What」が続けて演じられるのは、いきなりの違和感&先入観がっ!?!
う~ん、案の定、クールなブルースの前者は無難な仕上がりになっていますが、マイスル・デイビスのオリジナルスタジオバージョンに比べればグッとテンポアップして演じられた「So What」は、その勘違い的な解釈に逆に血が騒ぐとでも申しましょうか、ひたすらに突進するトリオの勢いが憎めないところで、野太いテナーサックにハードロック風味も感じられるオルガン、残響音を活かしたゴスペルチックなドラムスがイイ感じ♪♪~♪
と思った次の瞬間に置かれているのが「I Left My Heart In San Francisco」、つまり邦題「思い出のサンフランシスコ」という、誰もが耳にしたであろう人気曲の暑苦しいカバーバージョンなんですから、たまりません。
おぉ~~、ポール・レンフローのテナーサックスはある意味、その神髄に迫っていると思うのはサイケおやじだけでしょうか? この熱気と埃っぽさがクセになっちまいますよぉ~♪
そんなこんなの雰囲気はAラス「The Monkey Woman」の熱血ゴスペルジャズ、「Do It To Death」や「Thank Heaven」といった、おそらくはジャッキー・アイヴォリーのオリジナル曲と思われるトラックにも充満しており、このあたりがソウルジャズそのものに対する踏絵とでも申しましょうか、好き嫌いが十人十色の感性の確認になるような気がしますし、その意味でレイ・チャールズの代名詞「Lonely Avenue」での力強く、押し出しの効いた演奏に圧倒されるサイケおやじは、完全にこのアルバムに洗脳されたぁ~~、と痛感させられてしまいましたですよ。
あぁ~~、このファットなオルガンの響き、グイノリのドラムスにハードパップを体現したテナーサックの音色とフレーズの熱さが最高に好きですっ!
そしてそんなこんなが盾の両面の如く演じられているのが、ホレス・シルバーの当たり曲「Sister Sadie」で、本家に負けないアップテンポのハードバップ解釈が尚更にシンプルで潔し! ほとんど後半がヤケクソ気味に突っ走っている感じが素晴らしいですねぇ~~~♪
それもまた、ジャズの魅力であり、ソウルジャズの中毒性を示すひとつの恒例と思うばかりです。
ということで、全篇がイケイケの仕上がりで、こんな凄いアルバムがリアルタイムの我が国では紹介されていたんでしょうか?
正直に言わせていただければ、オルガン主体のソウルジャズには聊か気抜けのビールみたいな、事なかれ主義のアルバムも少なくない中にあって、曲毎の演奏時間は短くとも、ここまでガッツ溢れるトラックばかりというLPは裏名盤、あるいは好事家のコレクターズアイテムになっていると確信する次第です。
そして全くの偶然からこのLPに出会ったサイケおやじは、その幸運と至福に感謝するばかりですし、それを少しでもお裾分けしたい気持ちで、この文章を綴っております。
ど~か皆様には、何かの機会に一度はお楽しみいただきとうございますし、もしも現在まで、未CD化であったとすれば、逸早い復刻を強く願っているのでした。