■我愛你 / 方怡珍 (DAN / 徳間音工)
昭和歌謡曲の世界では避けて通れないのがチャイニーズ系の出稼ぎ歌手の存在であり、欧陽菲菲やテレサ・テン等々、我が国でも大きな成功を摑んだスタアよりも、今となっては決してブレイクしたとは言い難い、つまりはマニアックな領域において忘れられていない美女系シンガーもサイケおやじが大いに好むところです。
で、そのひとりとして本日ご紹介するのが、昭和48(1973)年春に掲載のシングル盤を日本でのデビュー作とした方怡珍(ファンイーツン)で、皆様ご推察のとおり、彼女は既に台湾においてモデルや女優、そして歌手として活躍していたキャリアがありましたから、日本の芸能界から誘いがあっても当然の存在だった様です。
しかし彼女には出身地の台湾以外にも香港やマカオ、タイ等々での契約が残っていたらしく、その所為で来日デビューが遅れたという裏話もあったと云われておりますが、それはそれとして、やはり美人は得と申しましょうか、我が国ではデビュー直後からテレビにも出演していましたし、芸能誌はもちろん、一般週刊誌のグラビア等々にも登場していた記憶が残っているほどですから、このシングル盤A面収録のデビュー作「我愛你」が作詞作曲:浜口庫之助から提供された名曲だった事にも納得するしかありません。
もちろん曲タイトルが漢字表記の「我愛你」というあたりだって、台湾出身というウリを旗幟鮮明にした戦略(?)と思われますが、その発音「ウォー・アイ・ニー」は中国語で「I Love You」の意味である旨がジャケットに表記されていますし、歌詞の大部分は日本語ですから、例によってのチャイニーズ系カタコト発音による節回しが、なかなかにポップなハマクラメロディにはジャストミート ♪♪~♪
イノセントな歌詞の世界をミディアムテンポのソフトロック風味で歌ってくれる彼女のボーカルには、癒されますねぇ~~♪
あぁ~、この一途な芯の強さ、そこはかとない慎みは大いに魅力だと思うんですが、いかがなものでしょう。
ということで、現在の芸能界にはハーフや在日系のタレントが溢れかえっておりますが、だからこそ本場からのリアルな芸能人が懐かしくなり、しかし……、このコロナ禍では、しばらくは無理かもしれません。
様々な交流が広がってこそ、あらゆる局面での発展が示される事は言わずもがな、閉鎖社会であっても、心の豊かさを失うという愚だけは、なんとしても避けたいものです。