■陽気な訪問者 / かとうはつえ (フィリップス)
1970年代の音楽的改革のひとつとして、制作されたレコードの演奏メンバーがジャケットに記載される等して、つまりは裏方だった凄腕プレイヤーの存在が知られる様になった事は、同時期から活性化したフュージョンの大ブームと連動していく重要ポイントでもありました。
そして結果的に、世に出たレコードで主役として歌っているシンガーよりも、そのバックで演奏しているメンバーの音が聴きたいというマニアックなファンが普通に増えていったという、なんとも本末転倒な音楽鑑賞のスタイルさえ堂々と成り立ち、ついには制作側もボーカリストの歌声に事寄せて、バックの演奏を重点的に聴かせようとしたとしか思えないレコードまでもが売られていたんですから、それはそれで幸せな状況だったと、今では思います。
例えば、本日掲載のシングル盤はシャンソン歌手の「加藤初枝」が、ど~ゆ~経緯なのか、昭和54(1979)年に「かとうはつえ」名義で制作発売したニューミュージック風味溢れるデビュー作?
とにかく、作詞:生来えつこ&作編曲:井上鑑が企図提供のA面「陽気な訪問者」は、ミディアムアップでキメが多いフュージョンサウンドをバックにした、これが如何にもAORのアンニュイな歌世界なんですが、既に述べたとおり、シャンソン歌手の彼女のボーカルスタイルが、なかなか違和感無く溶け込んでいるのは、やはり演奏パートの完成度の高さがあるからでしょうか?
実は同時期には、この「陽気な訪問者」を含むアルバムも制作されており、そのLP「カスケード」に記載の参加メンバーは松本恒秀(g)、土屋昌巳(g)、吉川忠英(g)、杉本喜代志(g)、井上鑑(key)、高水健次(b)、村上秀一(ds,per)、山本秀夫(ds,per) 等々の凄い顔ぶれの名前が並んでいるのですから、さもありなん!?
冒頭に述べたとおり、実はサイケおやじは、そのシャープでテクニカルな演奏パートに惹かれてしまうのが本音でありまして、もしかしたら……、その制作意図は演奏メインなのか?
なぁ~んて、かとうはつえには失礼千万、サイケおやじが基本的にシャンソンが苦手な所為もあるんですが、そんな極めて不遜な妄想までやらかしてしまうほど、このセッションのカラオケは永久保存されるべきかもしれません (^^ゞ
ということで、1980年代も末頃になると演奏パートそのものがデジタル化されてしまい、プレイヤーの個性が表面的にならなくなってしまったもんですから、以上に述べた様な別角度の楽しみは失われてしまった感があります。
それが本来の姿であると言われれば、それは全く……、そのとおりなんですが(^^;
う~ん、バックミュージシャンの名前でレコードを聴いていた、あの頃が懐かしいばかりです (^^;