「混戦は『ドングリの背比べ』」論は誤り
ここまで3回、日本サッカーをその急成長を示す出来事と監督の水準とから見つめてみた。これに対しては当然、こういう「流行の」反論に乗せられている方もおられよう。その2も3も「ドングリの背比べ」を示すだけではないか、と。つまり、日本の上位チームの力が落ちてきたうえに、アジアチャンピオンズリーグで疲弊するなども加わった、それだけのことではないかと。この見解は誤っている。こういう方々の視野は、短期的で、近視眼でもあるし、不勉強な感覚的なものと思う。そのことは、次のような数字、証拠を上げるだけで十分説明できる。
オシムは病に倒れる最後の時期までに、近年世界40位台中ごろだった日本を30位にまで上げた。そのピークの闘いが、その1で示したアウェーのガチンコ勝負で4点ずつとったヨーロッパ遠征の二戦である。最近の評論家たちは、ついこの前のこんな重要なゲームにも触れないで「日本の力は落ちた」などと語っているわけだ。
次に監督が岡田になって、当時の力が著しく落ちたのか。これも違うのである。以降の日本は38~34位をキープし、この10月現在は32位、基本的にはオシムの到達点を維持している。
そこで問題はこうなる。FIFAはなぜ日本を高く評価し、批判する日本の評論家たちの評価はなぜこうも低いのか。前者が正しくて、後者が誤っていることは明らかなのだが、そのことを説明してみたい。
FIFAはサッカーを、その土台から始まって全面的に見ているが、狭くて不勉強な評論家たちは極論すれば、「点が取れない」ということしか見ていないのだろう。サッカーの土台とは、止めて蹴る技術、スペースに走りながらスペースを造りボールを繋ぎ運ぶ組織的能力、視野の広さなどである。これらの力では、日本はもう世界20位に近いと、僕は思う。ただ、土台最後の最重要の力、点取り能力に欠けている。それで30位手前で足踏みしているのは明らかだ。
日本人のその足踏みには難しい原因がある。ヨーロッパ人のようなパワーがない。バティストゥータ、アドリアーノ、ファンニステルローイのようにはいかない。また、アフリカ人やブラジル人のような瞬発力が必要な敏捷性にも欠ける。現に、日本人の渡欧FWはほとんど成功していない。かろうじて例外は高原だけだが、彼でさえも個人で打開するタイプではない。それでも一定成功したのはなぜなのか? 日本人がこの足踏みから一歩前に踏み出すには何が必要なのか。それを教えてくれるのが、高原、そしてその1とその2のゲームなのではないか。つまり、日本型の組織的点取り術の創造という課題である。オシムがやったように、組織的に走りまわって集団で点を取る以外には道はないのだ。よく言われる、「個人技を磨け」とか、「裏へ抜け出よ」とかも、「集団で連携する点取り術」の中に位置づけるべきということだと思う。
その1が教えているのは、こういうことだろう。僕が評価する評論家・相馬直樹は、その1でも示したように、このゲームをこう語った。
「大きな自信をつかんだ」、「収穫の多い」ゲームであり、「オシム監督の狙いがようやく形になってきたのを感じた」と。その具体的な中身はこう語られていた。
「ボールを動かし、より良い選手を作り出すことと、どうやってゴールを奪うのかということがリンクしてきたのである」
なお、こういうことができる前提条件というものがある。ここぞと言うときに前方の3~4人の選手がゴールに詰めないといけないのだ。彼らが意志一致して、歯を食いしばってでも一斉にそういう場面を多く造ることだ。
次に、そういう時のモチベーションというものの大切さを教えてくれるのが、その2のホンダFCではなかったか。敢えて言うなら、「火事場の集団馬鹿力を何回も出さなければいけない」のである。ちなみに、現在のイングランドクラブサッカーを観戦していると、常時そんな力を出していると思うのは僕だけだろうか。世界ベスト10位に入るようなクラブが最も多く集まったこのリーグの闘いはいつもそんなふうである。
その3が教えることはこうだ。何人かのJリーグ監督が、確固とした「日本型点取り術」を確立し始めているのではないかと。ストイコビッチは、同国人オシムやイングランドから学んでシンプルなサイド攻撃を一つの形にした。タイプが違った二人ずつのFWとサイドMFとを組み合わせて、そこに4バックの左右両サイドも上がってくるという形だ。首位鹿島も、ダントツのJリーグ得点王マルキーニョスを軸に2トップ、2サイドMFに内田らサイドバックの攻撃参加と、全く同じ形である。昔ながらのトップ下を採用している清水も、試行錯誤の末に新たな攻撃のやり方を確立したかに見える。なおこの清水は、主力の攻撃陣が日本人であって、反則が非常に少ないチームだ。長谷川健太監督のポリシーなのだろう。反則の多いFWは世界に通用しないと思うから、FWを育てるために大事なポリシーと思う。
代表の岡田監督はこれらのチームからFWを選んでいる。名古屋・玉田、鹿島・コウロギ、清水・岡崎である。彼らが、代表の組織的点取り戦術を確立してくれると、信じている。岡田に見切りを付けるとしたら、Jリーグ優勝を待ってストイコビッチかオリベイラを監督にする道もあると思う。
ここまで3回、日本サッカーをその急成長を示す出来事と監督の水準とから見つめてみた。これに対しては当然、こういう「流行の」反論に乗せられている方もおられよう。その2も3も「ドングリの背比べ」を示すだけではないか、と。つまり、日本の上位チームの力が落ちてきたうえに、アジアチャンピオンズリーグで疲弊するなども加わった、それだけのことではないかと。この見解は誤っている。こういう方々の視野は、短期的で、近視眼でもあるし、不勉強な感覚的なものと思う。そのことは、次のような数字、証拠を上げるだけで十分説明できる。
オシムは病に倒れる最後の時期までに、近年世界40位台中ごろだった日本を30位にまで上げた。そのピークの闘いが、その1で示したアウェーのガチンコ勝負で4点ずつとったヨーロッパ遠征の二戦である。最近の評論家たちは、ついこの前のこんな重要なゲームにも触れないで「日本の力は落ちた」などと語っているわけだ。
次に監督が岡田になって、当時の力が著しく落ちたのか。これも違うのである。以降の日本は38~34位をキープし、この10月現在は32位、基本的にはオシムの到達点を維持している。
そこで問題はこうなる。FIFAはなぜ日本を高く評価し、批判する日本の評論家たちの評価はなぜこうも低いのか。前者が正しくて、後者が誤っていることは明らかなのだが、そのことを説明してみたい。
FIFAはサッカーを、その土台から始まって全面的に見ているが、狭くて不勉強な評論家たちは極論すれば、「点が取れない」ということしか見ていないのだろう。サッカーの土台とは、止めて蹴る技術、スペースに走りながらスペースを造りボールを繋ぎ運ぶ組織的能力、視野の広さなどである。これらの力では、日本はもう世界20位に近いと、僕は思う。ただ、土台最後の最重要の力、点取り能力に欠けている。それで30位手前で足踏みしているのは明らかだ。
日本人のその足踏みには難しい原因がある。ヨーロッパ人のようなパワーがない。バティストゥータ、アドリアーノ、ファンニステルローイのようにはいかない。また、アフリカ人やブラジル人のような瞬発力が必要な敏捷性にも欠ける。現に、日本人の渡欧FWはほとんど成功していない。かろうじて例外は高原だけだが、彼でさえも個人で打開するタイプではない。それでも一定成功したのはなぜなのか? 日本人がこの足踏みから一歩前に踏み出すには何が必要なのか。それを教えてくれるのが、高原、そしてその1とその2のゲームなのではないか。つまり、日本型の組織的点取り術の創造という課題である。オシムがやったように、組織的に走りまわって集団で点を取る以外には道はないのだ。よく言われる、「個人技を磨け」とか、「裏へ抜け出よ」とかも、「集団で連携する点取り術」の中に位置づけるべきということだと思う。
その1が教えているのは、こういうことだろう。僕が評価する評論家・相馬直樹は、その1でも示したように、このゲームをこう語った。
「大きな自信をつかんだ」、「収穫の多い」ゲームであり、「オシム監督の狙いがようやく形になってきたのを感じた」と。その具体的な中身はこう語られていた。
「ボールを動かし、より良い選手を作り出すことと、どうやってゴールを奪うのかということがリンクしてきたのである」
なお、こういうことができる前提条件というものがある。ここぞと言うときに前方の3~4人の選手がゴールに詰めないといけないのだ。彼らが意志一致して、歯を食いしばってでも一斉にそういう場面を多く造ることだ。
次に、そういう時のモチベーションというものの大切さを教えてくれるのが、その2のホンダFCではなかったか。敢えて言うなら、「火事場の集団馬鹿力を何回も出さなければいけない」のである。ちなみに、現在のイングランドクラブサッカーを観戦していると、常時そんな力を出していると思うのは僕だけだろうか。世界ベスト10位に入るようなクラブが最も多く集まったこのリーグの闘いはいつもそんなふうである。
その3が教えることはこうだ。何人かのJリーグ監督が、確固とした「日本型点取り術」を確立し始めているのではないかと。ストイコビッチは、同国人オシムやイングランドから学んでシンプルなサイド攻撃を一つの形にした。タイプが違った二人ずつのFWとサイドMFとを組み合わせて、そこに4バックの左右両サイドも上がってくるという形だ。首位鹿島も、ダントツのJリーグ得点王マルキーニョスを軸に2トップ、2サイドMFに内田らサイドバックの攻撃参加と、全く同じ形である。昔ながらのトップ下を採用している清水も、試行錯誤の末に新たな攻撃のやり方を確立したかに見える。なおこの清水は、主力の攻撃陣が日本人であって、反則が非常に少ないチームだ。長谷川健太監督のポリシーなのだろう。反則の多いFWは世界に通用しないと思うから、FWを育てるために大事なポリシーと思う。
代表の岡田監督はこれらのチームからFWを選んでいる。名古屋・玉田、鹿島・コウロギ、清水・岡崎である。彼らが、代表の組織的点取り戦術を確立してくれると、信じている。岡田に見切りを付けるとしたら、Jリーグ優勝を待ってストイコビッチかオリベイラを監督にする道もあると思う。