Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

ドレミを選んだ日本人

2007-04-13 20:42:18 | 新音律
千葉優子「ドレミを選んだ日本人」音楽之友社 (2007年3月).図書館で借りました.

いま巷に流れる音楽のほとんどが西洋音楽すなわちドレミのイディオムによる音楽である.それらは明治以前千年以上もかけて培ってきた日本の伝統音楽とは全く異なるものだ.私たちの耳はいつから日本の伝統音楽を異質なものと感じ,西洋音楽を快いものとして聴くようになったのだろう...というのがこの本の「まえがき」だ.

文明開化にともなって音楽も「洋高邦低」とされるあたりの記述は,膨大な資料に裏打ちされていて,音楽も社会の流れに流されたことがよく理解できる.CD・電波など音楽を実際に耳にすることができない状況で,上意下達で音楽が西洋化してしまうというのは凄いことだが,社会的にもこれを受け入れる状況があったのだ.

1985年に留学した伊沢修二の名前は本書で初めて知った.この,当時の愛知師範学校長が留学先のボストンで,音楽だけはどうにもならず,先生に見放されて「三日泣いて悲しんだ」すえ,一念発起して個人レッスンにより西洋音楽をマスターし,帰国後音楽教育に大きな役割を果たす.小学唱歌は彼が東西二洋,すなわち邦楽と洋楽を折衷させた結果であったという.

著者は宮城道雄記念館資料室室長とのことで,宮城道雄に関する記述が多い. 彼はドビュッシーやラヴェルが好きだったとか.もちろん邦楽の歴史も詳しく記述している.日本の音階について多少系統的な知識があったほうが読みやすいかも.
不可知論だが,今再現される邦楽と,明治以前の邦楽とは果たしてどの程度同じなのだろうか.現代の邦楽は西洋音楽に影響されているのではないかというのが,ぼくの個人的な疑問.
しかし,興味を持てたのはやはり小学唱歌以後,いまも唄われている歌の登場に関する記述だった.キーワードを列挙すると,蛍の光,バイエル,滝廉太郎,カチューシャの歌,赤い鳥,かなりや等々となる.

日本人が好むのは長音階の第4音と第7音を使わない「ヨナ抜き音階」だが,これにからめた本居長世,中山晋平,山田耕筰などが用いた音階に関する考察もおもしろい.
論文をそのまま単行本にしたような内容だが, 文章がカジュアルですらすら読める.もっともぼくは門外漢の特権で,データの羅列みたいなところは適当に飛ばしてしまった.索引がないのが不満.

コメント (2)
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