Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

無人島に生きる十六人

2010-06-09 07:41:31 | 読書
須川 邦彦「無人島に生きる十六人」新潮文庫 (2003/06)

桐野 夏生「東京島」の毒気にあてられたので,こちらを BOOKOFF で購入.もともとは昭和16年に少年倶楽部に連載されたもの.
子供向きだから,悪いことは全然描いてないから,安心して読める.「十五少年」でさえ子供達の間に対立があるが,それもない.

漂流して無人島生活を経験した船長が商船学校教官となって学生に語るというスタイル.東京島と違って小説ではないから比較するのは無理だが,敢えて条件の違いを挙げると

- こちらは女性がひとりも登場しない.

- 船長が強力なリーダーシップを発揮.かつ全員の倫理観が一致していたらしい.

- この時代は乗員全体が遭難・漂流・無人島生活をある程度覚悟していた.中には難船経験者もいた.井戸掘り・火起こしなどの危機管理能力があった...これは,「東京島」の中国人グループにも言えるかも.

たどり着いた島はのっぺりした砂地で,水はなく,もちろん洞窟があるわけでもなく,条件は厳しい.砂山をつくり櫓を建て,高さがどれだけなら視野はどれだけと計算する.ウミガメの牧場で食料を確保する.アザラシと仲良くなったり,楽しい場面も多い.
無人島生活の教科書みたい.

アメリカ人から帰化した老・小笠原島出身者が,アメリカの捕鯨船の船長だった父親を語る場面がある.雨が降ると帰化人から英語を習い,かわりに日本語を教える.ここばかりかハワイの場面でもアメリカ人は好意的に描かれている.このあたり,昭和23年単行本化されたさいに書き足しあるいは書き直されたのかもしれない,
著者は1949に無くなっておられるが,文章が古くさいという感じはまったくしない.こういう調子の文章をどこかで読んだのだが,思い出せない.

「痛快! 十六中年漂流記」(じつは若い人も混じっていたんだけど)と,題する解説が椎名誠 .
奥付の前の新潮文庫の広告には,ロビンソン,十五少年,蠅の王などがずらずらと並んでいた.
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