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通崎 睦美「木琴デイズ 平岡養一「天衣無縫の音楽人生」」(2013/09)
を読んでいる.タイトルは「木琴の時代」という意味だろうか.平岡養一が木琴でクラシックのリサイタルを開いていた時代は遠くなり,今では木琴という楽器はマリンバに放逐されてしまっている.
では,木琴とマリンバはどこが違うか? 小生は,木琴の音域を低音側に拡げたのがマリンバだろう...くらいに考えていたのだが,実は音色が違うのだった.これは木琴とマリンバそれぞれのソノグラム (参考書「視て聴くドレミ」).縦軸は周波数.音板を順番に叩いて行った結果なので,横軸は音高である.音源は
後藤 真孝, 橋口 博樹, 西村 拓一, 岡 隆一:
"RWC研究用音楽データベース: 研究目的で利用可能な著作権処理済み楽曲・楽器音データベース",
情報処理学会論文誌, Vol.45, No.3, pp.728-738, March 2004.
に記載されているもののひとつだが,楽器・マレット・奏者は明らかではない.でも聞いたところは,紛れもなく木琴とマリンバの音だった.
両者を比べると,木琴のスペクトルはほとんど単色である.3 倍波は存在するが,2倍波は痕跡程度だ.
これに対しマリンバでは音高によっては,2,3,4,5,6,7,8 倍波あたりまで見分けられる.マリンバの調律には10 倍音を使うと聴いたことがあるが,ここでは明瞭でない.
倍数波がちゃんと存在する点では,マリンバは管楽器・弦楽器と共通していると言えるのではないか.ただし 3,5,7 の奇数倍波のほうが偶数倍波より大きい.これは共鳴管が閉管だからだろう.
どちらの楽器でも,高音では単色に近づくようだ.
管弦楽と一緒に演奏した場合,マリンバは融和し,木琴は目立つだろう.だから,平岡養一は木琴協奏曲を黛,伊福部等に依頼したのだろう.ただし,上記「木琴デイズ」によれば,出来てきた作品は気に入らなかったらしく,平岡自身は一度も演奏しなかったとのこと.
低音域の音板を裏がえすと,マリンバは中央部分が大きくえぐれているが,木琴は波打っているそうだ.この構造の違いがスペクトルに現れるのだろう.
なお,木琴とマリンバのもうひとつの違いは音の伸び sustain にある.この解析ではそこが分からないが,いずれ また.
解析データ Amadeus Pro, 052MBMMF, 053XYSNF, range 80dB, gain 40dB, maxmum frequency 5,512Hz, FFT size 1,024, Hamming Window.