Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

Mama killed him

2019-02-01 09:33:23 | 読書
井上荒野「ママがやった」文春文庫 (2019/1).
原作は文学界に飛び飛びに発表され,単行本は 2016/1.

カバーの英文がネタバレ,と言いたいが,帯にも
*****これはとてつもない傑作...78歳の母が72歳の父を殺した.この家族,一体どうなっているのか? ユーモラスでクール,アナーキーな不条理小説*****
とあり,ママが「殺った」ことは秘密でもなんでもないらしい.

目次に8タイトル.最初の「ママがやった」を読み終わった時点では,不条理短編集と思っていた.つづく2編目の登場人物も同じなので,連作と悟った.父,母=ママ,長女,次女,息子という家族構成.最初と直結するのは最後の「縦覧謝絶」で,あいだの6編では時代が後戻りし,家族のそれぞれが主人公になる.「縦覧...」だけは家族外の女性の視点で描かれる.

解説 (池上冬樹) はこの小説を「広義の純文学ミステリ」と言うが,まったくミステリではないし,純文学というより風俗小説の肌合い.「装いは脱力したユーモアとドタバタ劇が面白いクライム・コメディだが,本質的には倫理も正義もないアナーキーな不条理劇といえるだろう」は当たっているかな?

この女たらしで自堕落な父親は,いつやられても不思議はない.でも,こんな風に生きて見たいと思わせる存在感 !!
井上荒野初体験だが,☆☆☆★
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