これは Penguin 版の井筒啓之によるカバーイラスト.使用料は 100,000 円だそうです.これがアンソロジーのどの作品を対象としてしているのだろうか?
以下は昨日の続き.個々の作品について.目次はこのブログの最後に示した.
最初の永井荷風作品を除けば,ハラキリに始まりヒロシマ・ナガサキを経てフクシマに終わる.これが世界が捉えるニッポンなのかな.
三島由紀夫「憂国 」はこういう機会がなければ絶対に手を出さない作品.
永井荷風,宇野浩二などの作品より,比較的新しい作品の方が自分にはぴんとくるようだ.紅白合戦とみなせば,紅組の勝ち.
「男と女」というテーマで括った6作品の作家たちは,中上健次を除き女性ばかり.河野多恵子「箱の中」,大庭みな子「山姥の微笑」,円地文子「二世の縁 拾遺」はどれも気味が悪かった.円地作品は上田秋成作品を現代語訳する話の中に入れ子として「春雨物語」の中の1編がそのまま出てくるのだが,秋成作品そのものの魅力たろう.
いちばん怖かったのは,作家中でいちばん若いという澤西祐典による「砂糖で満ちてゆく」.全身性糖化症(一般に糖皮病とよばれる,ともっともらしく解説しているが,作者が思いついたのだろう)という不治の病にかかった母の死と,その娘の話だが,ラストがショック.星野智幸「ピンク」のような傾向も好み,
小児虐待とフクシマをひっかけた,佐藤友哉「今まで通り」も怖いと言えば怖い.
以下は昨日の続き.個々の作品について.目次はこのブログの最後に示した.
最初の永井荷風作品を除けば,ハラキリに始まりヒロシマ・ナガサキを経てフクシマに終わる.これが世界が捉えるニッポンなのかな.
三島由紀夫「憂国 」はこういう機会がなければ絶対に手を出さない作品.
永井荷風,宇野浩二などの作品より,比較的新しい作品の方が自分にはぴんとくるようだ.紅白合戦とみなせば,紅組の勝ち.
「男と女」というテーマで括った6作品の作家たちは,中上健次を除き女性ばかり.河野多恵子「箱の中」,大庭みな子「山姥の微笑」,円地文子「二世の縁 拾遺」はどれも気味が悪かった.円地作品は上田秋成作品を現代語訳する話の中に入れ子として「春雨物語」の中の1編がそのまま出てくるのだが,秋成作品そのものの魅力たろう.
いちばん怖かったのは,作家中でいちばん若いという澤西祐典による「砂糖で満ちてゆく」.全身性糖化症(一般に糖皮病とよばれる,ともっともらしく解説しているが,作者が思いついたのだろう)という不治の病にかかった母の死と,その娘の話だが,ラストがショック.星野智幸「ピンク」のような傾向も好み,
小児虐待とフクシマをひっかけた,佐藤友哉「今まで通り」も怖いと言えば怖い.
内田百間「件」で思い出したのが,小松左京「くだんのはは」.
村上春樹の序文に「私小説アレルギー」という言葉がある.アレルギーとまでいうつもりはないが,自分は私小説は苦手らしい.
目次*****
序文 切腹からメルトダウンまで 村上春樹
日本と西洋
監獄署の裏 永井荷風
忠実なる戦士
興津弥五右衛門の遺書 森鷗外
憂国 三島由紀夫
男と女
焔 津島佑子
箱の中 河野多惠子
残りの花 中上健次
ハチハニー 吉本ばなな
の微笑 大庭みな子
二世の縁 拾遺 円地文子
自然と記憶
桃 阿部昭
『物理の館物語』 小川洋子
忘れえぬ人々 国木田独歩
1963/1982のイパネマ娘 村上春樹
ケンブリッジ・サーカス 柴田元幸
近代的生活、その他のナンセンス
屋根裏の法学士 宇野浩二
工場のある街 別役実
愛の夢とか 川上未映子
肩の上の秘書 星新一
恐怖
砂糖で満ちてゆく 澤西祐典
件 内田百閒
災厄 天災及び人災
関東大震災、1923
大地震・金将軍 芥川龍之介
原爆、1945
虫 青来有一
戦後の日本
ピンク 星野智幸
阪神大震災、1995
UFOが釧路に降りる 村上春樹
東日本大震災、2011
日和山 佐伯一麦
マーガレットは植える 松田青子
今まで通り 佐藤友哉
日本版のあとがき ジェイ・ルービン 由尾瞳 訳