Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

続 ペンギン・ブックスが選んだ日本の名短篇29

2020-02-05 09:37:35 | 読書
これは Penguin 版の井筒啓之によるカバーイラスト.使用料は 100,000 円だそうです.これがアンソロジーのどの作品を対象としてしているのだろうか?

以下は昨日の続き.個々の作品について.目次はこのブログの最後に示した.

最初の永井荷風作品を除けば,ハラキリに始まりヒロシマ・ナガサキを経てフクシマに終わる.これが世界が捉えるニッポンなのかな.
三島由紀夫「憂国 」はこういう機会がなければ絶対に手を出さない作品.
永井荷風,宇野浩二などの作品より,比較的新しい作品の方が自分にはぴんとくるようだ.紅白合戦とみなせば,紅組の勝ち.

「男と女」というテーマで括った6作品の作家たちは,中上健次を除き女性ばかり.河野多恵子「箱の中」,大庭みな子「山姥の微笑」,円地文子「二世の縁 拾遺」はどれも気味が悪かった.円地作品は上田秋成作品を現代語訳する話の中に入れ子として「春雨物語」の中の1編がそのまま出てくるのだが,秋成作品そのものの魅力たろう.

いちばん怖かったのは,作家中でいちばん若いという澤西祐典による「砂糖で満ちてゆく」.全身性糖化症(一般に糖皮病とよばれる,ともっともらしく解説しているが,作者が思いついたのだろう)という不治の病にかかった母の死と,その娘の話だが,ラストがショック.星野智幸「ピンク」のような傾向も好み,
小児虐待とフクシマをひっかけた,佐藤友哉「今まで通り」も怖いと言えば怖い.

内田百間「件」で思い出したのが,小松左京「くだんのはは」.

村上春樹の序文に「私小説アレルギー」という言葉がある.アレルギーとまでいうつもりはないが,自分は私小説は苦手らしい.



目次*****

序文 切腹からメルトダウンまで 村上春樹

日本と西洋
 監獄署の裏 永井荷風

忠実なる戦士
 興津弥五右衛門の遺書 森鷗外
 憂国 三島由紀夫

男と女
 焔 津島佑子
 箱の中 河野多惠子
 残りの花 中上健次
 ハチハニー 吉本ばなな
 の微笑 大庭みな子
 二世の縁 拾遺 円地文子

自然と記憶
 桃 阿部昭
 『物理の館物語』 小川洋子
 忘れえぬ人々 国木田独歩
 1963/1982のイパネマ娘 村上春樹
 ケンブリッジ・サーカス 柴田元幸

近代的生活、その他のナンセンス
 屋根裏の法学士 宇野浩二
 工場のある街 別役実
 愛の夢とか 川上未映子
 肩の上の秘書 星新一

恐怖
 砂糖で満ちてゆく 澤西祐典
 件 内田百閒

災厄 天災及び人災
 関東大震災、1923
  大地震・金将軍 芥川龍之介
 原爆、1945
  虫 青来有一
 戦後の日本
  ピンク 星野智幸
 阪神大震災、1995
  UFOが釧路に降りる 村上春樹
 東日本大震災、2011
  日和山 佐伯一麦
  マーガレットは植える 松田青子
  今まで通り 佐藤友哉

日本版のあとがき ジェイ・ルービン 由尾瞳 訳

コメント
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