Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

小暮夕紀子「残暑のゆくえ」

2022-11-12 22:09:00 | 読書
単行本「タイガー理髪店心中」に収められた,表題作ではないほうの一編.99 歳の夫を持つ 75 歳の妻・日出代の目線で語られる.日出代の母の秘密と,日出代の夫の秘密が次第に明らかになるというとミステリーみたいだが,著者としてはそんなつもりはないだろう.

ネタばらしをしてしまうと,北満からの引き揚げの際,足手まといとなる小さい子を処分することが行われた.日出代の母は,日出代の妹を処分した (らしい).また (おそらくは) ペつな部隊で,夫は軍人として,小さい子どもたちを処分した.

日出代の回想場面で,母が彼女に山に行って首をくくれと (幼い子は首をくくればどうなるかわからない) 命じる場面がある.
陰惨な小説だが,場末の食堂を切り回している日出代の性格づけもあり,あっけらかんとした読後感.

「タイガー理髪店心中」所収の2編の初出は「小説トリッパー」で,これは (株) 朝日新聞出版が発行する季刊小説誌で,週刊朝日別冊という位置づけだそうだ.それぞれ 2018年,2019年に発表されたが,後発のこの「残暑の...」のほうが奥行きがあると思う.朝日文庫に入ったら買おうかな...
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「タイガー理髪店心中」

2022-11-12 09:09:19 | 読書
小暮夕紀子「タイガー理髪店心中」 朝日新聞出版 (2020/1).

青春に対して老境を「玄冬」と言うのだそうで,本書の2編も玄冬小説.
図書館で借用.Amazon で見たら右のような帯があった.もちろん図書館本には帯がない.この惹句を読んだら,借りたか? 借りなかったか? 微妙.

でも帯に引用されたセリフで判断するよりも,ストーリーは日常的,ある意味で牧歌的で,それだけ怖いかもしれない.老夫婦を夫,寅雄という八十過ぎの老人 (タイガー店主) の立場から描いているのだが,長年連れ添ってくれば,妻が次第に壊れていっても.それもぼんやりと認めて諦めるしかない,ということ.

第4回林芙美子文学賞受賞作.角田光代氏の選評「寅雄という八十過ぎの老人 (タイガー店主) ののどかな悪意,善意にも見える無関心,肯定という鈍感」という言い方はそのまま 16 トンにも当てはまりそうだ.このごろ独り言を言って J 子に聞き返されたりすることも多い.

実際に心中が起こるわけではないのに,応募時の「暮れる」を改題したそうだが,このほうが本が売れると思ったから ?

もう一編の「残暑のゆくえ」のほうが小説的.これについてはまた...

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