Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

村のエトランジェ

2022-11-22 08:27:18 | 読書
小沼丹「村のエトランジェ」講談社 (文芸文庫 2009/7).

画像左はみすず書房版 1954 昭和 29 年のカバー.名のある画家によるものと思う.古書価格はゼロ4つ.

手許にあるのも古書だがゼロ2つの文庫本.カバーは文芸文庫共通に一律でつまらない.そのかわり,解説・年譜・著者目録が充実している.でも解説 (長谷川郁夫) は推理小説のネタバレみたいな面もあり,先に読まない方が良かったかも.

出版社内容情報*****
疎開先の村で起こった恋の騒動を、端正な都会的感覚の文章で綴った表題作を中心に、初期作品8篇を収録。都会的感覚で描かれた戦時下の心象風景。

小さな村に疎開してきた美しい姉妹。ひとりの男をめぐり彼女らの間に起こった恋の波紋と水難事件を、端正な都会的感覚の文章で綴った表題作ほか、空襲下、かつての恋人の姿をキャンバスに写すことで、命をすりへらしていく画家との交流をたどる「白い機影」など、初期作品8篇を収録。静かな明るさの中に悲哀がただよい、日常の陰影をさりげないユーモアで包む、詩情豊かな独自の世界。「小沼文学」への導きの1冊。
*****


ここに収められた諸作ではけっこう人が死ぬ.死んでも深刻にはならない.先に読んだ推理小説集とあまり変わらない.そもそも推理小説集の中身は推理小説ではなかったのかもしれない.

表題作のエトランジェ (異邦人) という語は昭和には使われたがこの頃は耳にしない.美しい姉妹とひとりの男が小さな村のエトランジェで,水難事件は殺人事件だ.村の悪童二人組の視点で描かれているが,語り手の「僕」の方は疎開児童だから,やっぱりエトランジェ.

「バルセロナの書盗」「登仙譚」「ニコデモ」の3作の舞台は昔の海外.推理小説集にも同じ趣向の作品があった.人物の名前がドン・ナニガシとかニコデモとかで,そのために登場人物が思い入れを拒否しているみたいでもある.

小沼文学では日本人でも名前がカタカナだったりする.
また「紅い花」の朝野夕子について,解説者はなんと投げやりな命名だろう と書いている.でもこの短編で姓も名も持っているのは朝野夕子だけだ.

違う本だけど,「黒いハンカチ」の探偵嬢はニシ・アズマ (アヅマだったか?  とにかく西東) だった.
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