Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

国宝『松浦屏風』の作者像

2022-11-29 08:47:18 | お絵かき
小田 茂一「風俗絵師・光琳  国宝『松浦屏風』の作者像を探る」青弓社 (2018/10).

出版社による紹介
*****「風俗図」「美人図」の絵師としての視座から光琳に新しいアプローチを試み、光琳絵画の根幹を明らかにする。同時に、近世の主要作品としてはその由来の解明が進んでいない『松浦屏風』をめぐる未確定事項、とりわけ作者像について一つの推論を加える労作。*****

J 子が著者からいただいた本だが,先に読んでしまった.学術書だと思うが,光琳作は「燕子花図」と「紅白梅図」しか知らなかった素人にも,おもしろかった...ただし,この2作品なら,自慢じゃないけど,実物を見た !

俎上に上がるのは下の写真の国宝「松浦屏風」で,この作者は尾形光琳であるというのがこの本の主張.この本では上の8人図を右隻,下の 10 人図を左隻としているが,どちらが左か右かに定説はない.



描かれているのは遊女・禿・遣り手だそうだが,どれが遣り手かぼくには判断できない.歌麿などの浮世絵の美女たちは,実はぼくにはあまりアピールしないのだけれど,ここに描かれた女性たちの容貌は浮世絵よりも現代的と思う.本の指摘のように全員が斜め前から描かれている.

本書はカルタ遊びなどの社会的背景.衣装の図柄とくに小紋デザイン,衣装の図柄を損なわない見せ方,光琳作の他の人物図の面立ちの比較,「燕子花図」との構図の比較などから光琳作を主張する.これが定説と化すかどうか,外野として興味がある.

図中に混在する複数の視座は西洋絵画を先取りしている説も書かれている.下の図の視線の動きは,西洋絵画でよく講義される,と思う.
ところでこうして見ると,中央 (右隻左端) のカルタで遊んでいるふたりは,他の群像と関係なく自分たちの世界に入り込んでいるようだ...


この本の不満は図が小さいこと.「誰が袖美人図屏風」 との関連が本文では1章を設けて論じているのに,この屏風の全体図すらない.というわけで,興味があったので下を CREA から転載させていただいた.両端では桜が室内に進出していて,この絵が部屋内外で交錯した視座を持つことがよく解る.

この本はネットで原画を参照・拡大縮小しながら読むのが良さそう.電子書籍化し,図のハイパーリンクを可能にしてネット販売されたら ? 金箔の貼り方も拡大すれば解るだろう.

コメント
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