J 子に連れられ泉美術館へ.左髪子の名から女流と思ったら然にあらず.水原秋桜子という俳号と同様な名乗り方らしい.
ポスター (トップ画像左) のねこは 30.5x23.2 の小品で「とらん」というタイトル.これより大きな4枚のスケッチのタイトルは「とらん君」と敬称がついていた.5枚中4枚では目を見開いているのが,熊谷守一の猫たちと対照的.
右の画集表紙の絵のタイトルは「宇品港にて」.
ポスターと画集の「反骨の...」という形容詞は,絵を見た限りではピンと来なかった.下の 182x546 の大作「ただの酒」を,画集では「ドロドロとした人間社会の一面をえぐり取った作品」とする倉橋清方の評が紹介されているが,ぼくにはむしろ「ユーモラスな雰囲気も漂っている」という永井明生の言がうなづける.
右半分と左半分で (一部の) 人物が共通しているようだ.
下左の「厳島風景」30.1x45.3.海も山も同じ緑色.実際は鳥居周辺にはごしゃごしゃと建造物があるのだが,全て省略.ただし背後の山波のかたちはどこか写実的.
右端の「巳」27.2x24.1 は,剥かれて残ったリンゴの皮みたい.十二支全部の色紙が存在したのかもしれないが,展示された動物は 4/12 だった.
中央の「ばら」大きさは「巳」と同じだが,色遣いが花ばかりでなく,特に葉に手が混んでいて,ぼく好み.
とにかくいろいろ描いた人らしい.
左は「夜なく五位鷺」54.2x38.0.インク.57 歳の作.他にこの種の作品はなかった.
右下「春耕」34.0x46.0 は 25 歳の作.この画家の出発点はこのあたりらしい.
右上「火煙要鎮 火魔退散」16.0x37.8 紙本彩色.同じ画風の絵馬も多数.
広告,雑誌・パンフレットの表紙,企業の年賀状,包装紙なども多数.繰り返しになるが,単なる「反骨の画人」だったらこうした商業美術の分野で相手にされなかったと思う.