Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

「ハルムスの世界」

2023-12-05 20:30:28 | 読書
ダニイル・ハルムス ;   増本 浩子,ヴァレリー・グレチュコ訳「ハルムスの世界」白水社 (白水Uブックス 2023/7).

カバーイラスト (ドミトリー・ナザレフ監督のアニメーション「ハルモニウム」2009 より,とある) でシャーロック・ホームズを連想したのはぼくだけではないらしい.ハルムスもホームズも語源 ? は同じなんだろう.

Amazon の紹介*****
長くソ連では当局に禁止されていたものの、いまやロシアはもとより、欧米諸国でカルト的な人気を集めているダニイル・ハルムス。ロシア・アヴァンギャルドの終焉に燦然と輝くハルムスは、そのミニマルな文体、意味と無意味の戯れ、ユーモアと不条理で、「ロシア文学」のイメージを颯爽と覆す。
代表作である生前未刊行の短篇集『出来事(ケース)』と、訳者がセレクトした短篇38篇からなる旧版に、新たに訳出した10篇〈アンコール・ハルムス〉を加えた増補版として待望の復刊。岸本佐知子氏推薦!*****

変な本を買っちゃった.
約 80 の掌編集.興味をお持ちの方は BOOK WALKER でひとつふたつ試読されることを勧める.残りも全部似たようなもの.でも,こう言うものが好きだったらこたえられないかも.かくいうぼくも,人生のある時期こういうのが好きだったように思う.

2010 年にヴィレッジブックスから出版された同名の本の増補改訂版.日本での初出時にはそこそこ反響があったということだが,ぼくは覚えていない.
訳者のひとり,増本さんの専門はドイツ文学だが,ドイツでは 2010 年には 10 種類以上ものハルムス本の翻訳が出ていたそうだ.

「出来事」/ ハルムス傑作コレクション / アンコール,ハルムス
の3部構成.
訳者のセレクションである「...コレクション」では随所に「コラム」が挿入され,作品を解説している.例えばハルムスの作品「邪魔」と,それに対応するコラム「黒いコートを着た男」は当局による思想犯逮捕劇を扱っている.コラムの現実も作品に劣らず不条理である.

訳者も言うように,その不条理ぶりはマザー・グースに似ている.ただしずっとえげつない.また体制に対する (批判というより ) 嘆きと諦めが加味されていることが多い..
ぼくがプラズマとビームの研究者だった時代には,ソ連の同業者とのお付き合いがあった.酒の上ではしばしば体制を当てこすった,自虐的に痛い小話を聞かされたことを 思い出した.ハルムスの作品は洗練されてはいるが,底流はああした小話と同じらしい.
プーチン体制下のロシアは ?  
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