Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

図形楽譜 「音楽学への招待」より

2024-04-19 20:50:34 | 読書
沼野 雄司「音楽学への招待」春秋社 (音楽学叢書 2023/1)

*****音楽についての学問といっても、その裾野は実に広い。本書では大作曲家の「駄作」からプロレスラーのテーマ音楽、さらには「モーツァルト効果」まで、さまざまな対象を歴史・社会学・心理学など多彩な切り口で考察する。かくも自由で融通無碍な学問のススメ。*****

書店で見かけて,買おうか買うまいかと迷ったまま帰ったが,図書館にあったので喜んで借りた.自分の場合,図書館本は読むが,買った本は安心して,かえって読まない傾向がある.

全7章からなり*****
1 駄作の考古学〜ワーグナー「アメリカ独立百周年行進曲」をめぐって : 音楽史学
2 モーツァルト効果狂騒曲 : 音楽心理学
3 音楽へのエクフラシス (芸術分野の変換) : 音楽解釈学
4 不確定性音楽をめぐるコミュニケーション : 音楽社会学
5 プロレスの入場テーマとは何か : 音楽民俗学
6 音楽作品のタイトルとは? : 音楽美学
7 アイスラーと非米活動委員会 : 音楽政治学
*****

各タイトルに示した内容が : の後に示した音楽学の分野に属すると言うことらしい.
どの章から読んでも良さそうなので,とりあえず 2 から始めた.「モーツァルトの楽曲を聴くと知的能力が向上する」説に関する論争だが,音楽心理学とはこう言うもの,と信じていいのだろうか.心理テストの統計学的解釈論に過ぎないのではないか.
音楽民俗学にプロレスの入場テーマを引き合いに出すのも同じで,題材の選択はウケ狙いらしい.でも,記述はまじめ.

次に読んだのが4.サブタイトルは「図形楽譜はどうして演奏可能なのか」.
マックス・ウェーバーの音楽社会学を読んだときは,これが音楽社会学かよ と思ったが,このたびも図形楽譜がなんで音楽社会学なの と思った.音楽学も,社会学も,その領域は曖昧模糊としているらしい.

さてこの章のテーマ,不確定性音楽は「偶然性の音楽」のひとつである.庄野進 (「音楽学」22[3]139) によれば
 作曲者 -(1)-> 楽譜 -(2)-> 演奏者 -(3)-> 音響 -(4)-> 聴取者
の連鎖の中で (2) の段階に偶然性が介入するものが「不確定性音楽」である.他の場合についてジョン・ケージの作品に対応させると,(1) は「易の音楽」,(3) は「ラジオ・ミュージック」,(4) は HPSCHD がその例だそうだ.

長くなり過ぎたので,肝心の図形楽譜については次回に書くことにして.とりあえずは 16 トンを含むグループが図形楽譜に従って 12 年前に作った「音響」を埋め込んでおく.


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