長山靖生編,彩流社(2019/8).美しい本で,楽しんで作ったように思える.「彩流社オリジナル復刻アンソロジー」の一冊.編者は SF 評論家と思っていたが,守備範囲はもっと広いらしい.
どの作品にも飲み物が出てくる.ただし酒類は除外.飲み物が主役ではなく,作品によってはさりげなくあしらわれているだけという場合もある.それでも解説が言うように「やはり象徴的な役割をになっているのにかわりはない」.というわけで,目次と各作品の扉ページには,『作者「タイトル」...飲み物』がリストアップされている.
学生時代にお別れした作家たちばかり.例外もあるが,昭和初期の作品が中心.童話を読んでいるのに近い気持ちになった.
堀辰雄「顔」…オレンジエード
立原道造「緑蔭倶楽部」…ココア
幸田露伴「軽井沢」…ライムジュース
小川未明「白い門のある家」…珈琲
岡本かの子「グレゴリー夫人訪問記」…紅茶
芥川龍之介「女」…血
松村みね子「草団子」…番茶
室生犀星「性に目覚める頃」抄…抹茶
横光利一「パーラーにて」(『花花』より)…牛乳
太宰治「美少女」…鉱泉水
夏目漱石「火鉢」…蕎麦湯
他に,「喫茶詩歌抄」として
北原白秋「五月」木下杢太郎「珈琲」宮澤賢治「厨川停車場」左川ちか「緑色の透視」小熊秀雄「夜の喫茶娘」大手拓次「ベルガモツトの香料」中原中也「一夜分の歴史」高村光太郎「梅酒」中島敦「於雨裸徂阜五首」
貧乏遊民向きの一冊.図書館で借用.
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