Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

ザ・万字固め

2016-04-14 17:18:01 | 読書
万城目 学,文春文庫 (2016/2).

Amazon の内容紹介*****ひょうたんへの限りなき愛。城崎温泉で構想した「タオル本」小説。台湾で「しゅららぼんコール」の不意打ちに出くわし、大阪市営地下鉄を戦隊ヒーローになぞらえる―。文庫化で、ブラジルW杯観戦記、畏敬する作家・車谷長吉への追悼など10篇を新規収録。迷想する。旅する。栽培する。縦横無尽!奇才マキメのエッセイ集!*****

短いものには,締め切りに追われて仕方なく書いた感があるものが混じっている.長いものの方が面白かった.というわけで,内容は予想どおりではあるものの,ベストは最長30ページ弱の「やけどのあと(2011 東京電力株主総会リポート)」.

配当金目当てで980万円の東電株を買ったところへ大震災.やっと株が売れた時の損失は734万円.ところが売却した二ヶ月後に株主総会開催通知が届く.定款に記された「基準日」現在で株主だったため.
会場のホテルの入り口は涼しいが,会社として世間様に節電をお願いしている手前,会場は冷房なし.
前方にはサクラが陣取り,役員陣が登場すると起立して迎え,会長の挨拶が終わると盛大に拍手する.
東電の態度を,国に対して卑屈.法律に対して卑屈・未来に対して卑屈と断ずる硬骨な文章も良い.
6時間にわたる会議で一度もトイレに行かず,総会を取り仕切った会長の妖怪ぶりによって,社長以下他の役員たちの頼りなさが際立つ.

原発からの撤退を求めた第3号議案について,三日後に届いた「総会決議後通知」には「本件は否決されました」の一行.
不毛な茶番会議であったというのが結論.

実は図書館で借りたのはミシマ社 2013 刊行の単行本.この文章の冒頭の惹句中の「文庫化で.....10篇を新規収録」は我が知るところにあらず.表紙カバーも中身にも単行本では佐々木一澄のヘタウマなイラストだが,文庫ではどうなんだろう.

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