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フレンチ・ミステリ「金時計」

2020-03-31 09:57:39 | 読書

ポール・アルテ,平岡敦訳「金時計 名探偵オーウェン・バーンズ シリーズ」行舟文化 (2019/5).

長すぎる! Amazon 内容紹介*****

1911年の冬――霧深い森にそびえる山荘「レヴン・ロッジ」。貿易会社の辣腕社長ヴィクトリアが招いたのは、いずれも一癖も二癖もある男女。ヴィクトリアの弟・ダレン、アーティストから転身した副社長アンドリュー・ヨハンソン夫妻、アンドリューの秘書のシェリル。アンドリューはシェリルとの浮気に溺れ、妻のアリスはとうにそれに気づいている。ダレンは金と女にだらしない男で、山荘で出会ったシェリルにも気がある様子……そんな顔ぶれが揃った朝、森の中で死体が発見される。現場は完全な「雪の密室」だった。

1991年の初夏――劇作家アンドレは、子供の頃に観たサスペンス映画を探していた。スランプに陥っていたアンドレは妻のセリアの助言もあって、自身の創作の原点といえるほどの影響を受けながら、タイトルすら忘れてしまったその映画にもう一度向き合おうとしたのだ。隣人の勧めで、アンドレは映画マニアの哲学者モローを訪ね、彼の精神分析を通じて少年時代に立ち返っていく……。
金の懐中時計、磔刑像、そして“存在しない戯曲"『黄衣の王』――魅惑的な小道具を通じて、80年の時を隔てた「過去」と「現在」が奇妙に呼応する、アルテ・ミステリの新境地!*****

左が訳書,右が原書の表紙だが,訳書の裏表紙には原書の表紙がそのまま使われている.奥付によれば,この絵も著者によるらしい.女性が抱えている本が,内容紹介にある『黄衣の王』である.この本の他にも,ふたつに割れた貝殻,タイトルの金時計などが小道具として登場する.

ふたつの時代が交互に語られる (読んでいてすこし混乱した).ふたつを結びつけるヒントとして,訳者はあとがきで船名をあげている.また,1991 年に登場するアンドレ Andre とセリア Celia という二つの名前が 1911  年に登場するダレン Daren とアリス Alice のアナグラムだったりする.こういう趣向がお好きな方向きの小説.

サブタイトルのオーウェン・バーンズは 1911 年当時の名探偵.テーマは雪の中の不可能犯罪だが,トリックはやはり過去の時代のものだ.1961 年のは心理ミステリっぽいが,ブーメランも使われる.筋の運びたが強引すぎるし,こんなに何人も殺さなくてもいいじゃないか...と思った.

出版社「行舟文化」は上海出身の「張舟」という共同筆名で,創作・翻訳活動を行って来ている夫妻によって運営されているそうだ.中国作家のミステリが出版されていて,面白そう.


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