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ウイルス感染方程式の解析解

2020-04-01 09:59:21 | 科学

先日コロナウイルス感染方程式の数値解のブログで紹介した,SIR 方程式の解析解に関する論文が早くも公開された.「数学・物理通信」のホームページ

http://www.phys.cs.is.nagoya-u.ac.jp/~tanimura/math-phys/index.html

に,第10巻第2号の2番目の論文として,早晩現れるはずである.著者とタイトルは

  世戸 憲治「ウイルス感染における SIR モデル」

  Kenji Seto "SIR Model for the Virus Infection"

この論文ではピーク時の感染者数を表す超越方程式などが示され,数値解を求めるときにはとても便利である.方程式そのものと,その数値解は上記 3/24 付けのブログをご参照ください.

この方程式は Kermack and McKendrick による 1927 年の SIR モデルによるものだが,いくつかの拡張モデルがある.これらのモデルの計算コードもダウンロードできるようだが.Mac の新 OS Catalina には非対応であった.

よく用いられる拡張モデルはSEIR で,SIR の「S←Susceptible まだ感染していないが感染の可能性のある状態の人,I←Infectious 感染していて,他を感染させる能力のある状態の人,R←Removed 回復して免疫保持した状態,あるいは病気により死亡した状態の人」に加え,E←Exposed すなわち潜伏感染者の人数も変数とする.ただし,感染した状態でも,感染させる能力をまだ持っていない / すでに感染させる能力を持っている を区別したり,それぞれの潜伏期を仮定したりと,システムは無駄に複雑になる.そもそもモデルのパラメータを決めるほどの知識を,われわれはウイルスに対して持っていないのだ.

また SIRS モデルでは,R すなわち回復した者のなかから,一定の割合で再度の感染が生じることを計算に入れる.

また方程式を立て,それを解析的・数値的に解く方法以外に,粒子モデル,すなわち個人をランダム・ウォークする粒子とし,ウイルスを持つ粒子との接触で流行を模擬したりする方法もありうる.プラズマ屋が得意とする方法である.

 

追記 1) 原論文は 4/1 から 1 週間程度ですが,ここからダウンロードできます.

https://1drv.ms/b/s!AtMVNOwTJHY4iHXmuiysAWHVy1Mj

 

追記 2) この扱いは単純だが,テレビ・ネットには,もっと素朴なのがまかりとおっている.例えば...

https://wired.jp/2020/03/30/how-fast-does-a-virus-spread/

感染者に免疫ができ,他人にウイルスを移さなくなることが考慮されていない.


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