Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

モリはモリ,カヤはカヤ

2020-12-11 09:48:25 | 読書
熊谷榧,白山書房(2013).

熊谷守一展で図録と共に購入.カヤこと榧さん(1929-)は,モリこと守一の次女.モリの死後,モリの旧居跡地に熊谷守一美術館を創立し館長を勤めている.でも16とんが熊谷榧の名を覚えたのは,雑誌「山と渓谷」などの山の画文からだった.

画家の子供が職業画家になると,いろいろ葛藤があるようだ.父には「小学校に入るまでの絵がよかった」と言われたそうだ.本のタイトルは父親からの独立宣言を思わせる.それでもこの本はカヤのモリに対する尊敬と愛情が感じられ,なにより面白い!
カバーの絵は榧さんがちゃぶ台に彫ったレリーフ「父と子」で,熊谷守一美術館で見た覚えがあるような...

熊谷守一仙人伝説は,日本経済新聞の聞き書き連載が本になった「へたも絵のうち」によるところが大きいと思う.
この本には「モリも仙人ではなかった」という節がある.現実のモリは絵は描かず,知人友人から金を (借りまくるのではなく) 貰いまくり,娘の夫に嫉妬する.モリ夫人は後輩の画学生の妻だったのをモリが奪い取ったかたちである.カヤさんの個展に現れた初対面のお嬢さんが,私の父がモリの子供だと言ったりする.

この本はモリのことが半分,山のことが半分.著者にとっては不本意かも知れないが,モリの部分の印象が強い.巻末の広告によれば榧さんの山岳書は12冊もあり,このうちの2冊は蔵書している.本書の山の部分は僕にとっては新鮮でないのかも知れない.

下左は「娘が赤ん坊を抱いて現れたのが新鮮な驚きだった」モリによる母子像.モデルのカヤにくれるはずだったのに画商が持っていってしまったので,もう一枚描いてくれたのだそうだ.ただしここにあげたのは,ネットにあった版画をコピーしたもの.油彩は本書の口絵に入っていて,リトグラフに比べると筆致が生々しい.

「熊谷守一最後の十日間」という章があって,なかなか死なないものだなぁと言うのが不遜にして正直な感想.下右はそこに挿入された「酸素吸入をするモリ」50号M (これは(これも)ネットからのコピー).自分が死にそうになったら酸素吸入は不要...と言いたいが,これがないと本人が苦しいのだろうか.死ぬのはいいが苦しいのはいやだな.



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