Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

ジェームス・B・ハリス先生のミステリ

2020-12-10 09:30:00 | 読書
昨日の「帽子蒐集狂事件」に,おまけのようにジェームズ・バーナード・ハリスなる作家の短編がふたつ.この人は,ぼくたちの世代では旺文社の大学受験ラジオの J・B・ハリス先生 (1916-2004) である.百万人の英語という英会話の番組もあった.

彼はラジオで聞く限り日本人のようにしゃべるが,日本語の読み書きはだめだったそうだ.ここにある2篇「死の部屋のブルース」「蝋人形」はそれぞれ1949,1950年に雑誌「宝石」に発表されたもので,それぞれ最後に小活字で訳者として高木彬光の名前があったそうだ.他にも短編がいくつか存在するらしい.どちらの訳も快調だ.カーよりもやさしい英語だったのだろう.それとも著者がチェックしたのか / 訳者が積極的に手を入れたのか.

どちらも昭和20年代の作品という感じで,現代とはやはりずれがある.
「死の部屋...」は小味な小編.剃刀が鍵だが,ちょっと無理.
「蝋人形」は前半の日本人とアメリカ人の問答と行動が,後半を引用する形式.後半は,明治の東京が舞台で,講談として高座で聞いたらおもしろそう.切られ与三郎とか石川五右衛門とか,著者の蘊蓄がうかがえる.
 
「蝋人形」の前半はなくもがなと思ったが,海外に発表するとしたら,イントロとして必要だろう.「死の部屋...」の舞台はアメリカらしく登場人物はみな横文字.これらの2作品は欧米の読者を対象と考えて英語で書かれと想像するが,海外で発表されたかどうかは知る由もない.

ハリスの経験談「ぼくは日本兵だった」も図書館で借りて読んだ !

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