チョ・ウリ,カン・バンファ訳「私の彼女と女友達」書肆侃侃房 (しょしかんかんぼう 韓国女性文学シリーズ 2023/4) .
カバーイラストに釣られて図書館で借りた.右の原書のをそのまま使ったそうで,見返しには装画クォン・ソヨン,タイトル ghosts とある.でも訳者はあとがきで「そうではない,絶対に天使の (2枚の ?) 羽だ」と書いている.確かに,この本の作品群は天使のようにも幽霊のようにも読める.
登場人物はそれぞれ異なる8篇からなる短編集.表題作は「私の彼女と,彼女の女友達」という意味.「私」も女性であり,このようなセクシュアル・マイノリティを扱う文学をクィア文学というのだそうだ.queer という単語なら知っていたが,そういう使い方をすることは知らなかった.「私の彼女と...」はレズであることのカミングアウトを扱っている.
「私たちがハンドルをつかむとき」「ねじ」「犬5匹の夜」などは,ヒロインたちがレズであっても,そのことを前面に打ち出しているわけではない.訳者に言わせれば,立ち位置が不安定な人々が分岐点を見つける物語であって,扱っている問題は普遍的だから,レズについて (ホモについてでも) よく理解していなくても,小説は理解できた.
「11 番出口」「物々交換」はクィア文学ではない,だろう.
「ミッション」「ブラック・ゼロ」などによれば,会社組織の上下関係やパワハラは日本より韓国のほうがシビアらしい.でも一番新しい「ミッション」「私の彼女...」が2020 年,後は 2010 年代の作であることを考慮すべきかもしれない.
欧米の文学と比べても,韓国文学では,名前を見ても男性か女性かわからないのが難.
見返しのチョン・セラン (小説家) の言「(チョ・ウリの小説は) 心温まる話のときも非情な話のときも,風通しがちょうどいいから絶望に息切れすることがない.... すらすら読めるのに,手を止めて考えさせる」は,的確だ.
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます